ー この記事の要旨 ー
- SDS法とPREP法は、ビジネスシーンで説得力のある文章や説明を構築するための代表的なフレームワークで、それぞれ異なる目的と効果を持っています。
- 本記事では、両者の構成要素の違い、適した使用場面、具体的な例文を詳しく解説し、状況に応じた最適な選択基準を提示しています。
- 実践的なトレーニング方法とテンプレートを活用することで、プレゼン、営業、報告書など多様な場面で即座に応用でき、コミュニケーション力と文章力の大幅な向上が期待できます。
SDS法とPREP法とは?文章構成の基本フレームワーク
SDS法とPREP法は、ビジネスコミュニケーションにおいて「わかりやすく伝える」ための文章構成フレームワークです。どちらも結論を先に述べる点では共通していますが、その後の展開方法や目的が大きく異なります。
SDS法は「Summary(要約)→Details(詳細)→Summary(まとめ)」の3段階で構成され、情報を効率的に伝達することに重点を置いています。一方、PREP法は「Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)」の4段階で構成され、相手を論理的に説得することに焦点を当てています。
この2つの手法を適切に使い分けることで、プレゼンテーション、報告書、営業トーク、メールなど、あらゆるビジネスシーンでのコミュニケーション効果を飛躍的に高めることができます。本記事では、それぞれの特徴と違いを明確にし、実務で即座に活用できる具体的な使い分け方法をお伝えします。
SDS法の基本構成と特徴
SDS法は、情報を三段階で伝える構成法です。最初のSummary(要約)で全体像を提示し、Details(詳細)で具体的な内容を説明し、最後のSummary(まとめ)で要点を再確認します。
この手法の最大の特徴は、聞き手が最初と最後に同じ情報に触れることで記憶に残りやすくなる点です。心理学における「初頭効果」と「親近効果」を活用しており、冒頭と結末の情報が特に印象に残る人間の記憶特性を利用しています。
ニュース記事や報告書、プレゼンテーション資料など、事実やデータを正確に伝える場面で高い効果を発揮します。特に時間制約がある場面では、冒頭の要約だけで要点を理解してもらえるため、多忙なビジネスパーソンへの情報伝達に適しています。
PREP法の基本構成と特徴
PREP法は、論理的な説得力を重視した構成法です。Point(結論)で主張を明示し、Reason(理由)でその根拠を説明し、Example(具体例)で実証し、最後に再度Point(結論)で主張を強調します。
この手法の強みは、理由と具体例によって主張を多角的に補強できる点にあります。聞き手は「なぜそう言えるのか」「実際にどんな事例があるのか」という疑問に対する答えを順序立てて受け取ることで、納得感を得やすくなります。
営業提案、企画書、意見具申、面接での回答など、相手に行動や判断を促す場面で特に効果的です。論理的思考力をアピールする必要がある場面や、反対意見が予想される状況での説得にも適しています。
両者に共通する「わかりやすさ」の原則
SDS法とPREP法には、結論を先に述べるという共通の原則があります。これは「結論ファースト」と呼ばれ、現代のビジネスコミュニケーションにおける基本中の基本です。
結論を後回しにすると、聞き手は「何が言いたいのか」を探りながら話を聞くことになり、認知的負荷が高まります。結論を先に提示することで、聞き手は全体の方向性を把握した上で詳細を理解できるため、情報処理が容易になります。
また、両手法とも「構造化された説明」という点で共通しています。情報を適切な順序で段階的に提示することで、複雑な内容でも理解しやすくなります。これらのフレームワークを使いこなすことは、単に文章力を向上させるだけでなく、論理的思考力そのものを鍛えることにつながります。
SDS法とPREP法の5つの違いを徹底比較
SDS法とPREP法は、一見似ているようで実は目的も効果も大きく異なります。ここでは5つの観点から両者の違いを詳しく比較し、それぞれの特性を明確にしていきます。
構成要素の違い:要約型vs論理展開型
SDS法の構成は「要約→詳細→要約」というシンプルな三段階です。最初の要約で全体像を示し、詳細で内容を展開し、最後の要約で念押しをします。この構造は情報の「伝達」に特化しており、事実やデータを正確に届けることを目的としています。
対してPREP法は「結論→理由→具体例→結論」という論理展開型の四段階構成です。結論だけでなく、その根拠となる理由と実証となる具体例を組み込むことで、説得力を段階的に積み上げていきます。
この違いは、SDS法が「何を伝えるか」に重点を置くのに対し、PREP法が「なぜそう言えるのか」という論証プロセスに重点を置いていることを示しています。同じ内容を扱う場合でも、情報伝達が目的ならSDS法、説得や納得形成が目的ならPREP法を選択するのが適切です。
説得力の生まれ方:理解促進vs納得形成
SDS法における説得力は、情報の明確さと記憶への定着から生まれます。冒頭と結末で同じ要点を繰り返すことで、聞き手の記憶に強く刻まれます。詳細部分では事実やデータを提示することで、客観的な理解を促進します。
PREP法における説得力は、論理の積み重ねから生まれます。理由で「なぜ」に答え、具体例で「実際に」を示すことで、聞き手の中に納得感が形成されていきます。この二重の補強により、単なる理解を超えた「腹落ち」の状態を作り出すことができます。
実務での違いとして、SDS法は「理解してもらえば十分」な場面に適しています。例えば、議事録や報告書では事実を正確に伝えることが最優先です。一方PREP法は「理解した上で行動してほしい」場面に適しています。営業提案や企画書では、相手に具体的なアクションを起こしてもらう必要があるためです。
適した文章の長さ:短文vs中長文
SDS法は短文から中文に適した構成です。要約と詳細とまとめという三段階構成は、シンプルで覚えやすく、短時間で完結する説明に向いています。ビジネスメールやチャット、エレベーターピッチのような30秒から1分程度の説明で特に効果を発揮します。
PREP法は中文から長文に適しています。理由と具体例を丁寧に説明するには、ある程度の文字数や時間が必要になります。プレゼンテーション、提案書、ブログ記事など、5分以上の説明や800文字以上の文章で真価を発揮します。
ただし、この違いは絶対的なものではありません。SDS法でも詳細部分を充実させれば長文に対応できますし、PREP法でも各要素を簡潔にまとめれば短文での使用も可能です。重要なのは、与えられた時間や文字数の中で、どちらの構成がより効果的かを判断することです。
読み手の関与度:受動的理解vs能動的思考
SDS法は、読み手や聞き手に対して比較的受動的な情報受容を求めます。要約で全体像を示されるため、聞き手は提示された情報を理解することに集中できます。この特性により、専門知識の少ない相手や、多忙で思考の余裕がない相手への説明に適しています。
PREP法は、聞き手の能動的な思考を促します。理由を聞くことで「確かにそうだ」と考え、具体例を聞くことで「実際にそういうことがあるのか」と想像します。この思考プロセスが納得感を深め、記憶への定着を強化します。
この違いは、相手の状況によって使い分けの基準となります。相手が疲れている、時間がない、または初めて聞く内容で複雑な場合はSDS法が親切です。相手に判断や決断を求める場合、または相手が十分な思考時間を持っている場合はPREP法が効果的です。
目的の違い:情報伝達vs行動喚起
SDS法の主な目的は情報伝達です。事実、データ、手順、状況などを正確に相手に届けることを重視します。そのため、ニュース記事、議事録、業務報告、マニュアルなど、客観的な情報共有が求められる場面で多用されます。
PREP法の主な目的は行動喚起です。相手に何かを納得してもらい、具体的な行動や判断を促すことを重視します。営業提案、企画書、意見具申、採用面接など、相手の意思決定に影響を与える必要がある場面で威力を発揮します。
この目的の違いを理解すると、場面ごとの適切な選択が自然にできるようになります。「相手に何をしてほしいのか」という問いに対して、「理解してほしい」ならSDS法、「行動してほしい」ならPREP法と判断できます。両者を明確に区別することで、コミュニケーションの精度が格段に向上します。
SDS法が効果的な5つのシーンと実践例文
SDS法は、情報を効率的かつ正確に伝えることに優れた手法です。ここでは、SDS法が特に効果を発揮する具体的な場面と、実際に使える例文を紹介します。
ニュース記事や報告書での活用法
ニュース記事や業務報告書では、事実を客観的に伝えることが最優先されます。SDS法の構造は、まさにこの目的に最適です。
例文:「本日の会議で新プロジェクトの予算が承認されました(要約)。会議では、予算総額3000万円、実施期間6か月、担当チーム5名という条件で全会一致の承認を得ました。具体的なスケジュールは来週中に確定し、来月1日からプロジェクトを開始します(詳細)。これにより、新プロジェクトが正式に始動することになります(まとめ)。」
この構成により、冒頭の一文だけでも要点が把握でき、詳細が必要な人は続きを読むという効率的な情報伝達が実現します。特に複数の報告事項がある場合、各項目をSDS法で構成することで、読み手は短時間で全体を把握できます。
プレゼン冒頭での全体像提示
プレゼンテーションの冒頭でSDS法を用いると、聞き手に「これから何の話をするのか」を明確に伝えられます。これにより、聞き手は安心して詳細に耳を傾けることができます。
例文:「本日は当社の新サービスについてご説明します(要約)。このサービスは、中小企業向けのクラウド会計システムで、導入費用を従来の半分に抑え、使いやすさを大幅に向上させました。3つの主要機能と5つの導入メリットについて、事例を交えながら15分でご紹介します(詳細)。これから詳しくご説明する新サービスが、皆様のビジネスに貢献できることを確信しています(まとめ)。」
このアプローチにより、聞き手は全体の構造を理解した上でプレゼンを聞くことができ、理解度が向上します。特に複雑な内容や長時間のプレゼンでは、この冒頭の全体像提示が極めて重要になります。
短時間での説明が求められる場面
エレベーターピッチや廊下での立ち話など、1分以内で要点を伝える必要がある場面では、SDS法の簡潔さが際立ちます。
例文:「今回の広告キャンペーンは大成功でした(要約)。目標としていたウェブサイトへのアクセス数を150%達成し、コンバージョン率も前回比で2倍になりました。特にSNS経由の流入が予想を大きく上回りました(詳細)。次回キャンペーンでもこの成功パターンを活用できそうです(まとめ)。」
わずか60秒程度でも、SDS法を使えば要点、根拠、今後の展望をコンパクトに伝えられます。多忙な上司や顧客とのコミュニケーションで、この技術は非常に重宝します。
初対面の相手への自己紹介
自己紹介では、相手に自分のことを短時間で記憶してもらう必要があります。SDS法を使うと、印象に残る自己紹介が可能になります。
例文:「営業部で新規事業開発を担当している田中です(要約)。前職では5年間、IT業界で法人向けソリューション営業に従事し、年間売上目標を3年連続で達成しました。特にクラウドサービスの提案に強みがあり、大手企業への導入実績が20社以上あります(詳細)。この経験を活かして、御社の新規事業拡大に貢献したいと考えています(まとめ)。」
最初と最後で自分の立場と価値を明確にすることで、相手の記憶に残りやすくなります。面接、商談、ネットワーキングイベントなど、あらゆる場面で応用できます。
メールやチャットでの簡潔な情報共有
ビジネスメールやチャットツールでは、相手の時間を奪わない簡潔なコミュニケーションが求められます。SDS法は、この要件を完璧に満たします。
例文:「来週の会議日程が変更になりました(要約)。当初予定していた火曜14時から、木曜10時に変更となります。会議室も本社3階から2階に変わります。参加メンバーと議題に変更はありません(詳細)。木曜10時、本社2階会議室でお待ちしています(まとめ)。」
メールの件名や冒頭で結論を示し、詳細を説明し、最後に要点を再確認する。このパターンを習慣化することで、社内コミュニケーションの効率が大幅に向上します。特にリモートワーク環境では、この明確なコミュニケーションスタイルが信頼関係の構築にもつながります。
PREP法が効果的な5つのシーンと実践例文
PREP法は、相手を論理的に説得し、行動を促すための強力なツールです。ここでは、PREP法が真価を発揮する具体的な場面と実践例文を紹介します。
営業やプレゼンでの提案
営業提案では、顧客に商品やサービスの価値を納得してもらい、購入という行動を促す必要があります。PREP法は、この目的に最適な構成です。
例文:「当社のクラウドストレージサービスを導入すべきです(結論)。なぜなら、貴社の現在の課題である『データ管理の煩雑さ』と『セキュリティリスク』の両方を解決できるからです(理由)。実際に、同業他社のA社では導入後3か月で業務効率が30%向上し、情報漏洩リスクもゼロになりました(具体例)。貴社でも同様の成果が期待でき、投資対効果は半年で回収可能です。ぜひ導入をご検討ください(結論)。」
理由で課題解決の根拠を示し、具体例で実績を提示することで、顧客の「本当に効果があるのか」という疑問に答えています。この構成により、単なる商品説明を超えた説得力のある提案が実現します。
上司への報告や意見具申
上司に対して提案や意見を述べる際、PREP法を使うと論理的で説得力のある報告ができます。特に自分の判断や意見を求められる場面で効果的です。
例文:「新しいプロジェクト管理ツールの導入を提案します(結論)。現在のツールでは、複数のプロジェクトを横断的に管理することが難しく、進捗の可視化にも時間がかかっているためです(理由)。他部署で先行導入したB部門では、プロジェクト管理にかかる時間が週5時間から2時間に削減され、納期遅延も半減しました(具体例)。当部門でも同様の効果が見込めるため、来期予算での導入を検討いただきたいです(結論)。」
上司は日々多くの判断を求められるため、結論と理由が明確な報告を好みます。PREP法を使うことで、上司の意思決定をサポートする質の高い報告が可能になります。
顧客への説得を伴う説明
顧客が懸念や疑問を持っている場合、PREP法で丁寧に説明することで納得を得やすくなります。特にクレーム対応や仕様変更の説明で有効です。
例文:「今回の納期遅延は避けられない状況でした(結論)。サプライヤーからの部品供給が、予期せぬ自然災害により2週間停止したためです(理由)。同様の状況に陥った他のプロジェクトでも、平均して10日から14日の遅延が発生しています。当社としては代替サプライヤーを緊急手配し、業界平均を下回る10日の遅延に抑えました(具体例)。ご迷惑をおかけしましたが、品質を維持しながら最短での納品を実現できました(結論)。」
不利な状況でも、理由と具体例を誠実に説明することで、顧客の理解と信頼を得ることができます。この構成は、謝罪と説明のバランスを保ちながら、建設的な対話を維持するのに役立ちます。
面接での質問回答
採用面接では、限られた時間で自分の能力や経験を効果的にアピールする必要があります。PREP法は、面接官に強い印象を残す回答を可能にします。
例文(「あなたの強みは何ですか」への回答):「私の強みは、困難な状況でも諦めずに成果を出せることです(結論)。これは、前職で新規事業の立ち上げに携わった経験から培われました。市場調査、事業計画、チーム編成など、すべてがゼロからのスタートでしたが、粘り強く取り組みました(理由)。結果として、立ち上げから2年で黒字化を達成し、現在は年商2億円規模に成長しています。特に、競合が撤退した市場で顧客ニーズを丁寧に拾い上げたことが成功要因でした(具体例)。この粘り強さと成果志向は、御社の新規プロジェクトでも必ず貢献できると確信しています(結論)。」
面接官は多くの応募者を短時間で評価する必要があるため、構造化された明確な回答を高く評価します。PREP法による回答は、論理的思考力のアピールにもつながります。
社内資料やブログ記事の執筆
報告書、企画書、ブログ記事など、読み手を説得する文章では、PREP法の構造が読みやすさと説得力を生み出します。
例文:「リモートワークは生産性を向上させます(結論)。通勤時間が削減されることで、従業員はより多くの時間を実務に充てられるようになるためです。また、自分に合った環境で働けることで集中力も高まります(理由)。スタンフォード大学の研究では、リモートワーク導入企業の生産性が平均13%向上したというデータがあります。日本国内でもC社が全社リモートワークを導入した結果、従業員満足度と業務効率が同時に向上しました(具体例)。適切な制度設計と管理体制があれば、リモートワークは企業と従業員の双方にメリットをもたらします(結論)。」
ブログやコラムでは、読者に新しい視点や行動変容を促すことが目的です。PREP法を使うことで、読者が「なるほど」と納得し、記事の内容を実践につなげやすくなります。
使い分けの判断基準:3つの視点で最適な手法を選ぶ
SDS法とPREP法のどちらを使うべきかは、状況によって異なります。ここでは、実務で即座に判断できる3つの視点を提示します。
目的で選ぶ:理解vs説得vs記憶
コミュニケーションの目的を明確にすることが、最も重要な判断基準です。目的は大きく「理解してもらう」「説得する」「記憶してもらう」の3つに分類できます。
情報の理解を目的とする場合は、SDS法が適しています。議事録、報告書、ニュース記事など、事実を正確に伝えることが重要な場面です。要約で全体像を示すことで、読み手は内容を構造的に理解できます。
相手を説得して行動を促す場合は、PREP法を選択します。営業提案、企画書、意見具申など、相手の意思決定に影響を与える必要がある場面です。理由と具体例による論理的な補強が、説得力を生み出します。
記憶に残すことを重視する場合も、SDS法が有効です。冒頭と結末で同じ要点を繰り返すことで、記憶への定着率が高まります。プレゼンテーションの重要ポイントや、研修での学習内容など、後で思い出してもらいたい情報に適しています。
相手の状況で選ぶ:時間・関心度・専門性
相手が置かれている状況も、重要な判断材料になります。時間的制約、関心の度合い、専門知識のレベルを考慮します。
時間がない相手には、SDS法が親切です。冒頭の要約だけで要点を把握できるため、詳細を読む時間がなくても最低限の情報は伝わります。忙しい経営層や管理職への報告では、この配慮が特に重要です。
相手の関心度が高く、じっくり検討してもらえる場合は、PREP法で丁寧に説明できます。導入を検討している顧客や、重要な意思決定を行う会議など、時間を確保してもらえる場面では、理由と具体例を充実させることで深い納得を得られます。
専門知識が少ない相手には、SDS法のシンプルな構造が理解を助けます。専門用語や複雑な論理展開は避け、要点を明確に伝えることを優先します。逆に、専門性の高い相手には、PREP法で論理的な根拠を示すことで、プロフェッショナルとしての信頼を得られます。
内容の性質で選ぶ:事実・意見・提案
伝える内容の性質によっても、適切な手法は変わります。事実、意見、提案のいずれかによって判断します。
事実を伝える場合は、SDS法を選択します。データ、統計、発生した出来事など、客観的な情報は、要約と詳細という構造で整理することで、正確に伝達できます。ニュースリリース、業務報告、調査結果の共有などが該当します。
自分の意見や主張を述べる場合は、PREP法が効果的です。意見には必ず根拠が必要であり、理由と具体例がその役割を果たします。社内での提案、ブログでの主張、会議での発言など、自分の考えを表明する場面で使用します。
提案を行う場合も、PREP法が適しています。提案は相手に行動を求めるものであり、「なぜその提案が良いのか」という説得が不可欠です。新規事業の企画、業務改善の提案、投資案件のプレゼンテーションなどで威力を発揮します。
この3つの視点を組み合わせることで、ほとんどの場面で最適な手法を瞬時に判断できるようになります。慣れてくれば、無意識のうちに適切な構成を選択できるようになり、コミュニケーションの質が安定します。
SDS法とPREP法を組み合わせた応用テクニック
両手法は単独で使うだけでなく、組み合わせることでさらに強力な表現が可能になります。ここでは、実務で役立つ応用テクニックを紹介します。
長文でのハイブリッド活用法
長文の記事やレポートでは、全体構成にSDS法を使い、各セクションの中でPREP法を用いる方法が効果的です。これにより、全体の見通しの良さと、各論の説得力を両立できます。
具体的には、冒頭で全体の要約を提示し(SDS法のSummary)、本文の各章で個別のトピックを論理的に展開し(PREP法)、最後に全体をまとめる(SDS法のSummary)という構造です。
例えば、業務改善提案書であれば、冒頭で「3つの改善策を提案します」と全体を要約し、本文で各改善策をPREP法で論じ、最後に「これら3つの改善により、年間コスト20%削減が実現します」とまとめます。この構造により、読み手は全体像を把握しながら、各提案の詳細を理解できます。
プレゼン資料での段階的な使い分け
プレゼンテーションでは、スライドごとに適切な手法を選択することで、聞き手の理解と納得を段階的に深められます。
導入部分では、SDS法で全体像を提示します。「本日お話しする3つのポイント」として要約を示し、聞き手に見通しを与えます。次に、各ポイントをPREP法で詳しく説明します。主張、理由、具体例、再度の主張という流れで、各トピックを掘り下げます。
最後のまとめでは、再びSDS法に戻ります。全体の要点を振り返り、聞き手が持ち帰るべきメッセージを明確にします。この段階的な使い分けにより、30分や1時間のプレゼンテーションでも、聞き手の集中力と理解度を維持できます。
複数トピックでの構造化手法
複数の異なるトピックを扱う場合、全体の枠組みとしてSDS法を使い、各トピック内でPREP法を適用する方法が有効です。
例えば、四半期業績報告では、冒頭で「売上、利益、新規顧客の3点について報告します」と全体を要約します(SDS法)。次に、売上については「前年比120%を達成しました。理由は新商品が好調だったためです。具体的には…」とPREP法で説明します。利益と新規顧客についても同様にPREP法で論じます。最後に「3つの指標すべてで目標を達成しました」とまとめます(SDS法)。
この構造により、複雑な情報でも聞き手は全体の流れを見失わず、各トピックの詳細も理解できます。会議、報告書、セミナーなど、多様な内容を扱う場面で応用できます。
聞き手の反応に応じた切り替え方
対面でのコミュニケーションでは、相手の反応を見ながら柔軟に手法を切り替えることが重要です。これは、高度なコミュニケーションスキルの一つです。
最初はSDS法で簡潔に要点を伝え、相手が興味を示したらPREP法で詳しく説明する、という流れが基本です。例えば、営業の場面で「当社のサービスは、コスト削減と業務効率化を同時に実現します」(SDS法)と切り出し、顧客が「具体的にはどうやって?」と関心を示したら、「理由は3つあります。第一に…」とPREP法に切り替えます。
逆に、PREP法で詳しく説明している途中で、相手が時間を気にし始めたら、「要するに…」とSDS法の要約に戻ります。この柔軟な対応により、限られた時間でも最大の効果を得られます。相手の表情、質問、時計を見る仕草などから、適切なタイミングを読み取る観察力も併せて磨きましょう。
文章力を高める5つの実践トレーニング方法
SDS法とPREP法を真に使いこなすには、知識だけでなく実践的なトレーニングが必要です。ここでは、日常業務の中で無理なく継続できる効果的な練習方法を紹介します。
日常業務での意識的な実践
最も効果的なトレーニングは、日常業務の中で両手法を意識的に使うことです。特別な時間を設けなくても、毎日のメール、会議、報告の場面が練習機会になります。
メールを書く際は、送信前に「この内容はSDS法とPREP法のどちらが適切か」と自問する習慣をつけましょう。事実を伝えるならSDS法、提案や意見ならPREP法と判断し、意識的にその構成で書きます。最初は時間がかかりますが、1か月程度で自然に構成できるようになります。
会議での発言も絶好の練習機会です。発言前に頭の中で構成を組み立て、結論から話し始めることを徹底します。「結論から申し上げますと…」という枕詞を使うことで、自分自身にも聞き手にも結論ファーストを意識させることができます。
テンプレートを使った反復練習
両手法のテンプレートを作成し、それを埋めていく練習が基礎力の向上に役立ちます。テンプレートは、各要素が何を意味するのかを常に意識させてくれます。
SDS法のテンプレート例は、「【要約】〜〜〜 【詳細】〜〜〜 【まとめ】〜〜〜」という形式です。PREP法は、「【結論】〜〜〜 【理由】〜〜〜 【具体例】〜〜〜 【結論】〜〜〜」となります。
このテンプレートに、実際の業務で扱った内容を当てはめる練習を週に数回行います。過去のメールや会議資料を取り上げ、「もしあの時この構成で書いていたら?」と書き直してみるのも効果的です。この反復により、構成の型が身体に染み込んでいきます。
フィードバックを活用した改善サイクル
自分だけで練習するのではなく、同僚や上司からのフィードバックを得ることで、飛躍的な成長が可能になります。
作成した文書や行ったプレゼンについて、「結論は明確でしたか」「理由に説得力はありましたか」といった具体的な質問をして、フィードバックを求めましょう。特に、PREP法での理由や具体例が十分だったかについての意見は貴重です。
また、自分が受け取ったメールや参加した会議で、「わかりやすかった」「説得力があった」と感じたものを分析します。その構成がSDS法かPREP法か、あるいは別の工夫があるのかを見極めることで、優れた技術を学べます。
優れた事例の分析と模倣
ビジネス書、優れたブログ記事、効果的だったプレゼン資料などを、構成の観点から分析する習慣をつけましょう。プロの書き手や話し手がどのように構成しているかを学ぶことは、最も効率的な上達法の一つです。
例えば、TED Talksの人気スピーチを見る際、どの部分が結論で、どこで理由を述べ、どんな具体例を使っているかをメモします。ビジネス雑誌の記事も、多くがSDS法やPREP法の構造を持っています。
最初は完全な模倣から始めても構いません。優れた文章の構成を真似しながら、自分の内容に置き換えていく練習をします。模倣を繰り返すうちに、自然と自分なりの表現スタイルが確立されていきます。
録音・録画による自己チェック
自分の話し方や書いた文章を客観的に評価することは、意外に難しいものです。録音や録画を活用することで、第三者の視点から自分のコミュニケーションを分析できます。
プレゼンや会議での発言を録音し、後で聞き返してみましょう。「結論から話せていたか」「理由と具体例が明確だったか」「要約で締めくくれていたか」をチェックします。多くの場合、自分が思っている以上に構成が曖昧だったり、結論が後回しになっていたりすることに気づきます。
書いた文章についても、一晩寝かせてから読み返すことで、客観的な視点が得られます。「この段落はSDS法で書いたつもりだったが、実際には詳細が不足している」といった発見があります。この自己フィードバックのサイクルを回すことで、着実にスキルが向上します。
よくある質問(FAQ)
Q. SDS法とPREP法、初心者はどちらから学ぶべきですか?
初心者にはまずPREP法から学ぶことをお勧めします。PREP法は4つの要素が明確で、「結論→理由→具体例→結論」という流れが直感的に理解しやすいためです。特に、理由と具体例を述べる習慣は、日常会話でも役立つスキルです。
PREP法に慣れてから、より簡潔なコミュニケーションが必要な場面でSDS法を学ぶと、両者の違いと使い分けが自然に身につきます。ただし、どちらから始めても問題はなく、自分の業務で使う頻度が高い方から練習するのも効果的です。
Q. 両方の手法を一つの文章で使うことはできますか?
はい、可能です。むしろ長文やプレゼンテーションでは、両方を組み合わせる方が効果的な場合が多くあります。
典型的な使い方は、全体の枠組みとしてSDS法を使い、各セクション内でPREP法を適用する方法です。例えば、報告書の冒頭で全体を要約し(SDS法)、本文の各章で個別トピックを論理的に展開し(PREP法)、最後に全体をまとめる(SDS法)という構成です。この組み合わせにより、読み手は全体像を把握しながら、詳細な内容にも納得できます。
Q. 話し言葉と書き言葉で使い方は変わりますか?
基本的な構成は同じですが、いくつかの調整が必要です。話し言葉では、書き言葉以上に簡潔さと繰り返しが重要になります。
話し言葉でSDS法を使う場合、要約とまとめの表現を完全に同じにするのではなく、若干変えることで単調さを避けます。PREP法では、理由や具体例を話す際に「つまり」「たとえば」といった接続詞を明示的に使うことで、聞き手が構造を理解しやすくなります。
また、書き言葉では読み返せますが、話し言葉では聞き逃しがあるため、重要なポイントは意図的に繰り返す必要があります。「先ほど申し上げた通り」「もう一度申し上げますと」といった表現を活用しましょう。
Q. これらの手法を使っても説得できない場合の原因は?
構成が正しくても説得できない主な原因は3つあります。一つ目は、理由や具体例の質が不十分な場合です。PREP法の理由が抽象的だったり、具体例が相手にとって関連性が低かったりすると、構成だけでは説得力は生まれません。
二つ目は、相手のニーズや関心を理解していない場合です。どんなに論理的に説明しても、相手が求めていない情報では納得を得られません。説得の前に、相手が何を重視しているかをよく理解する必要があります。
三つ目は、信頼関係の不足です。構成技術は重要ですが、それだけでは不十分で、話し手に対する信頼がなければ説得は成立しません。日頃からの誠実なコミュニケーションや実績の積み重ねも、説得力の重要な要素です。
Q. SDS法やPREP法以外に覚えるべき文章構成法はありますか?
はい、状況に応じて他の構成法も有効です。代表的なものに、ストーリーテリング、問題解決型構成、時系列構成などがあります。
ストーリーテリングは、感情に訴えかけたい場面で効果的です。起承転結の流れで、聞き手を物語の中に引き込みます。問題解決型構成は、「現状の問題→原因分析→解決策→期待される効果」という流れで、特に企画書や改善提案で使われます。
ただし、基本としてSDS法とPREP法を確実にマスターすることが最優先です。これら2つの手法で大半のビジネスシーンに対応できます。他の構成法は、これらをマスターした後に、必要に応じて学んでいけば十分です。
まとめ
SDS法とPREP法は、ビジネスコミュニケーションにおける文章構成の基本フレームワークです。SDS法は「要約→詳細→まとめ」の構成で情報伝達に優れ、PREP法は「結論→理由→具体例→結論」の構成で説得力を生み出します。
両者の違いを理解し、目的や相手の状況、内容の性質に応じて適切に使い分けることが重要です。情報を正確に伝えたい場面ではSDS法を、相手を説得して行動を促したい場面ではPREP法を選択します。また、長文やプレゼンテーションでは、両方を組み合わせることでさらに効果的なコミュニケーションが実現します。
これらの手法を身につけるには、日常業務での意識的な実践、テンプレートを使った反復練習、フィードバックの活用が効果的です。最初は型通りに構成することに集中し、慣れてきたら状況に応じた柔軟な応用を目指しましょう。
文章構成のフレームワークを使いこなすことは、単に伝え方の技術を向上させるだけでなく、論理的思考力そのものを鍛えることにつながります。今日からさっそく、メール一通、会議での発言一つから、SDS法とPREP法を意識して実践してみてください。継続的な実践により、あなたのコミュニケーション力は確実に向上していきます。

