ワークエンゲージメントの高め方10選|バーンアウトを防ぐコツ

ワークエンゲージメントの高め方10選|バーンアウトを防ぐコツ 組織開発

ー この記事の要旨 ー

  1. ワークエンゲージメントを高めるには、仕事の意義の可視化、自律性の拡大、成長機会の設計、承認の仕組み化、心理的安全性の確保という5つの柱が鍵を握ります。 
  2. 本記事では、JD-Rモデルに基づく向上メカニズムから、ジョブ・クラフティングの実践法、テレワーク環境での工夫、バーンアウトを防ぐセルフマネジメントまで、10の具体的な方法を解説します。 
  3. これらの施策を段階的に取り入れることで、個人の働きがいとチーム全体の生産性向上を同時に実現できます。

ワークエンゲージメントを高める基本の考え方

ワークエンゲージメントを高めるには、「仕事の資源(ジョブリソース)」を増やし、「仕事の要求(ジョブデマンド)」を適正化するアプローチが有効です。

チーム全員が疲弊している、若手の離職が続いている、会議での発言が減った。こうした兆候は、エンゲージメント低下のサインかもしれません。

ワークエンゲージメントは「活力・熱意・没頭」の3要素で構成されますが、これらを高めるには、個人の意識改革だけでなく、職場環境や仕事の設計を見直す必要があります。

本記事では、ワークエンゲージメントの定義や測定方法は既存記事「ワークエンゲージメントとは?」で詳しく解説しているため、ここでは「高め方」と「バーンアウト予防」に焦点を当てます。

高める前に押さえたい3要素のおさらい

ワークエンゲージメントは、仕事への「活力」「熱意」「没頭」が揃った状態を指します。活力はエネルギーと回復力、熱意は仕事への意義と誇り、没頭は深い集中と時間感覚の変化を意味します。

注目すべきは、この3つはバラバラに存在するのではなく、相互に影響し合う点です。仕事に意義を感じる(熱意)からこそエネルギーが湧き(活力)、集中して取り組める(没頭)。逆に、没頭できる環境がないと熱意も冷めやすくなります。

JD-Rモデルから見る向上のメカニズム

JD-Rモデル(Job Demands-Resources Model:仕事の要求度-資源モデル)は、ワークエンゲージメント研究の基盤となる理論的枠組みです。このモデルでは、仕事を「要求(Demands)」と「資源(Resources)」の2軸で捉えます。

仕事の要求とは、業務量、時間的プレッシャー、対人ストレスなど、エネルギーを消耗させる要素です。一方、仕事の資源とは、裁量権、上司のサポート、成長機会、フィードバックなど、エネルギーを補充し、目標達成を助ける要素を指します。

実は、エンゲージメントを高めるには「要求を減らす」より「資源を増やす」方が効果的だとされています。ストレス軽減だけではエンゲージメントは上がりにくく、仕事の資源を充実させることで、活力・熱意・没頭が高まるメカニズムです。

ワークエンゲージメントを高める10の方法

ワークエンゲージメントを高める方法は、①仕事の意義を可視化する、②自律性と裁量権を広げる、③成長機会を意図的に設計する、④承認と感謝を仕組み化する、⑤心理的安全性を確保する、⑥1on1ミーティングを機能させる、⑦フィードバック文化を根づかせる、⑧目標設定を対話型にする、⑨ジョブ・クラフティングを実践する、⑩セルフマネジメントでバーンアウトを防ぐ、の10項目です。以下では前半5つを解説します。

※本事例はワークエンゲージメント向上施策の活用イメージを示すための想定シナリオです。

営業チームリーダーの佐々木さん(38歳)は、半年前にチームを引き継ぎました。前任者の急な異動でメンバーの士気は低く、月次目標の未達が3か月続いていました。佐々木さんはまず、週1回の1on1で「この仕事の何にやりがいを感じるか」を全員に聞くことから始めました。次に、各メンバーが顧客に提供した価値を週次ミーティングで共有する仕組みを導入。さらに、提案書の構成を自分で決められる裁量を与えました。3か月後、チームの月次目標達成率は80%から110%に改善し、「自分の仕事が顧客に届いている実感がある」という声が増えました。

仕事の意義を可視化する

「なぜこの仕事をしているのか」を言語化できると、熱意が高まります。日々の業務が顧客や社会にどう貢献しているかを明確にすることで、作業が「単なるタスク」から「価値を生む活動」へと変わります。

具体的には、チームミーティングで「今週、顧客に提供できた価値」を一人ひとりが発表する時間を設けます。5分程度で十分です。自分の仕事が誰かの役に立っている実感は、熱意の源泉になります。

自律性と裁量権を広げる

自分で判断し、仕事の進め方を決められる環境は、活力を生み出します。マイクロマネジメントが続くと、「言われたことをやるだけ」の状態に陥り、主体性が失われます。

ここがポイントで、裁量権は「全部任せる」か「全部管理する」かの二択ではありません。「ゴールは握るが、プロセスは任せる」というバランスが現実的です。たとえば、週次の成果目標はすり合わせつつ、達成方法は本人に委ねるアプローチが有効です。

成長機会を意図的に設計する

「この仕事を通じて成長できている」という感覚は、熱意と没頭を後押しします。成長機会は偶然に訪れるものではなく、意図的に設計するものです。

具体的には、3か月後に習得したいスキルを1on1で言語化し、そのスキルを使う業務に優先的にアサインします。人事部門であれば、1on1ミーティングのファシリテーション技術を磨く機会を意図的に設ける。エンジニアチームであれば、スクラム運用の経験を積めるプロジェクトへの参加を促す。こうした設計が成長実感を高めます。

承認と感謝を仕組み化する

承認と感謝は、熱意を維持する燃料です。ただし、「ありがとう」を言うだけでは形骸化します。具体的な行動や成果に紐づいた承認が効力を発揮します。

見落としがちですが、承認のタイミングが遅れると効果は半減します。成果が出た直後、あるいは努力が見えた瞬間に伝えることで、「自分の行動は見られている」という安心感が生まれます。SlackやTeamsで「今日の〇〇さんのナイスプレー」を共有するチャンネルを設ける方法も一つです。

心理的安全性を確保する

心理的安全性(チーム内で自分の意見を安心して発言できる状態)は、エンゲージメントの土台となります。ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授が提唱したこの概念は、発言がネガティブに評価されない環境を指します。

正直なところ、心理的安全性は「仲が良い」こととは異なります。率直に異論を述べられる、失敗を報告しても責められない、という状態が本質です。リーダーが自分の失敗を先に共有し、「こういうミスをした。皆さんも気をつけて」と伝えることで、チームに安心感が広がります。

チームで実践する5つの施策

チームのエンゲージメントを高めるには、1on1の機能化、フィードバック文化の醸成、対話型の目標設定、定期的な振り返り、相互支援の仕掛けづくりの5つが鍵を握ります。ここでは前半3つを解説します。

1on1ミーティングを機能させる

1on1の目的は「部下の話を聴くこと」であり、業務報告の場ではありません。週30分、隔週でもよいので、定期的に対話の時間を確保します。

1on1で避けたいのは、上司が話しすぎるパターンです。目安として、部下が7割、上司が3割の発話比率を意識します。「最近、仕事で気になっていることは?」「何があるとやりやすくなる?」といったオープンクエスチョンで始めると、対話が深まります。

大切なのは、1on1で出た課題を放置しないことです。「前回話していた〇〇、その後どう?」とフォローすることで、「聴いてもらえている」という実感が生まれます。

フィードバック文化を根づかせる

フィードバックは、成長機会を可視化する手段です。ポジティブなフィードバックは熱意を高め、建設的なフィードバックは成長を促します。

フィードバックが機能しない原因の多くは、曖昧さにあります。「もっと頑張って」ではなく、「今日のプレゼンで、データを3つに絞ったのが良かった。次回は結論を最初に言うとさらに伝わりやすくなる」と具体的に伝えます。

ここが落とし穴で、フィードバックを「評価」と混同すると機能しません。評価は過去の成果を判定するもの、フィードバックは未来の成長を支援するものです。この区別をチーム内で共有しておくことで、建設的な対話が生まれやすくなります。

目標設定を対話型にする

目標を上から一方的に降ろすと、「やらされ感」が生まれます。本人が目標設定のプロセスに参加することで、オーナーシップ(自分ごと意識)が高まります。

対話型の目標設定では、まずチームの目標を共有し、「この中で、あなたが特に貢献できそうな部分は?」と問いかけます。本人の強みや関心を踏まえて目標を調整することで、納得感が生まれます。

目標は固定ではなく、四半期ごとに見直す柔軟さも必要です。環境変化に応じて優先順位を調整することで、形骸化を防げます。

ジョブ・クラフティングで仕事を再設計する

ジョブ・クラフティングとは、従業員自身が主体的に仕事の内容ややり方を調整し、働きがいを高める手法です。与えられた仕事をそのまま受け入れるのではなく、自分で工夫を加えることで、熱意と活力が高まります。

ジョブ・クラフティングの3つのアプローチ

ジョブ・クラフティングには、タスク・クラフティング、リレーショナル・クラフティング、コグニティブ・クラフティングの3つの方向性があります。

タスク・クラフティングは、仕事の範囲や内容を調整することです。得意なタスクを増やす、苦手なタスクの進め方を工夫する、新しい業務に手を挙げるといった行動が該当します。

リレーショナル・クラフティングは、仕事で関わる人を変えることです。他部署との連携を増やす、メンターを見つける、後輩の育成に関わるなど、人間関係の幅を広げます。

コグニティブ・クラフティングは、仕事の意味づけを変えることです。「単なるデータ入力」を「経営判断を支える情報整理」と捉え直すことで、同じ作業でも熱意が変わります。

実践のステップと注意点

ジョブ・クラフティングを始めるには、まず「今の仕事で、自分が変えられる部分は何か」を書き出します。次に、3つのアプローチの中で取り組みやすいものを1つ選び、小さな実験を始めます。

意外にも、ジョブ・クラフティングには上司の許可が不要なケースが多いです。業務の優先順位を少し変える、ミーティングでの発言を増やす、といった調整は自分の判断で可能です。

ただし、チームへの影響が大きい変更は、事前に上司と相談しておくと安心です。「こういう工夫をしてみたいのですが」と伝えることで、サポートを得られる可能性も広がります。

テレワーク環境でエンゲージメントを維持する方法

テレワーク環境でもエンゲージメントを維持するには、オンラインでの「存在感」を示す工夫と、孤立感を防ぐチームの仕掛けが欠かせません。

オンラインでも「存在感」を示す工夫

リモートワークでは、「見えない」ことが承認機会の減少につながります。意識的に自分の活動を可視化することで、存在感を維持できます。

具体的には、日次や週次で「今日取り組んだこと・明日の予定」をチャットで共有します。形式ばった報告ではなく、1〜2行程度の気軽な発信で十分です。「〇〇の資料、ようやく完成しました」といった一言が、チームメンバーとの接点になります。

オンライン会議でカメラをオンにすることも、存在感に寄与します。表情が見えることで、発言への反応が伝わりやすくなり、対話の質が上がります。

孤立感を防ぐチームの仕掛け

テレワーク環境では、雑談の機会が減り、孤立感を感じやすくなります。これを防ぐには、業務外のコミュニケーション機会を意図的に設計します。

週1回、15分程度の「雑談タイム」をオンラインで設けるチームもあります。議題なし、参加任意で、最近読んだ本や休日の過ごし方を話すだけの時間です。こうした「弱いつながり」が、孤立感を和らげます。

実は、テレワークでエンゲージメントが下がりやすいのは、入社から日が浅いメンバーや、対面でのコミュニケーションを好むタイプです。こうしたメンバーには、意識的に1on1の頻度を上げるなど、個別の配慮が求められます。

バーンアウトを防ぐセルフマネジメント

バーンアウトを防ぐには、燃え尽きの兆候を早期にキャッチし、回復力(レジリエンス)を高める日常習慣を持つことがポイントです。

燃え尽きの兆候を早期にキャッチする

バーンアウトは突然訪れるのではなく、前兆があります。「朝、起きるのがつらい」「休日も仕事のことが頭から離れない」「小さなミスにイライラする」といった変化に気づくことが、早期対処の第一歩です。

バーンアウトの兆候は、活力・熱意・没頭の3要素で捉えると整理しやすくなります。活力の低下は疲労感や回復の遅さ、熱意の低下は仕事への興味喪失、没頭の低下は集中力の欠如として現れます。

見落としがちですが、「没頭しすぎ」もリスクサインです。仕事から離れられない、休憩を忘れる、という状態が続くと、活力が枯渇しやすくなります。

回復力を高める日常習慣

回復力を高めるには、仕事と休息の境界を明確にすることが基本です。テレワーク環境では特に、終業時刻を決めてPCを閉じる、といった物理的な区切りが有効です。

また、仕事以外の活動を持つことも回復力を支えます。運動、趣味、家族との時間など、仕事とは別のアイデンティティを持つことで、仕事での失敗や挫折からの立ち直りが早くなります。

週に1日は完全に仕事から離れる日を設けることも効果的です。メールを見ない、Slackを開かないといったルールを自分に課すことで、心理的な回復が進みます。

エンゲージメント向上でよくある失敗パターン

エンゲージメント向上施策でよくある失敗は、施策の形骸化と効果測定の欠如の2パターンです。

施策が形骸化する原因

1on1を導入したが業務報告の場になっている、フィードバック研修を実施したが現場で使われていない。こうした形骸化は、「手段の目的化」が原因です。

形骸化を防ぐには、「この施策で何が変わればOKか」を事前に定義しておくことが欠かせません。1on1であれば「部下が自分の課題を言語化できるようになる」、フィードバック研修であれば「月に1回以上、具体的なフィードバックが行われる」といった成功基準を設けます。

さらに、施策の運用状況を定期的に振り返る場を設けることで、形骸化に早く気づけます。四半期に1回、「施策は機能しているか」をチームで確認する時間を取りましょう。

効果測定を怠るリスク

「エンゲージメント施策をやっている」という事実に満足し、効果測定を怠るケースも少なくありません。測定なしでは、施策が機能しているかどうかの判断ができず、改善にもつながりません。

効果測定の基本は、施策の前後で数値を比較することです。UWESなどの尺度でスコアを測定し、施策実施後に再測定して変化を確認します。測定は半年に1回程度が現実的です。

数値だけでなく、定性的な変化も捉えることがポイントです。「会議での発言が増えた」「自発的な提案が出るようになった」といった行動変化を観察し、記録しておくことで、エンゲージメント向上の兆候を把握できます。

よくある質問(FAQ)

ワークエンゲージメントが低い原因は何?

仕事の資源(裁量権、成長機会、承認)が不足していることが主な原因です。

JD-Rモデルに基づくと、仕事の要求が高すぎる場合よりも、仕事の資源が乏しい場合にエンゲージメントが低下しやすいとされています。上司からのフィードバックがない、成長を感じられない、といった状態が続くと、熱意や活力が失われます。

まずは「何があれば仕事がやりやすくなるか」を言語化し、上司やチームと共有することから始めてみてください。

上司ができるエンゲージメント向上の取り組みは?

裁量権を与え、承認とフィードバックを具体的に伝えることが最も効果的です。

部下の仕事の進め方に細かく口を出さず、ゴールの共有と結果へのフィードバックに集中します。成果が出たときだけでなく、努力や工夫が見えた瞬間にも「〇〇が良かった」と伝えることで、熱意が維持されます。

1on1を定期的に実施し、部下の課題や関心を把握することも、上司としてできる基本的な取り組みです。

ジョブ・クラフティングの具体的なやり方は?

まず「自分が変えられる部分」を書き出し、タスク・人間関係・意味づけのいずれかで小さな実験を始めます。

タスクの優先順位を変える、新しい業務に手を挙げる、他部署のメンバーとランチをする、といった小さな行動がジョブ・クラフティングの入口です。

上司の許可が必要な変更は事前に相談し、許可不要な範囲から始めると取り組みやすくなります。

エンゲージメント施策の効果はどう測定する?

UWESなどの尺度を用いて、施策の前後でスコアを比較するのが基本です。

半年に1回程度、定期的に測定を行い、スコアの変化やバランス(活力・熱意・没頭の偏り)を確認します。部署別・職種別の比較も有効で、特定の部署だけスコアが低い場合は、その部署固有の課題がある可能性を示唆しています。

数値だけでなく、会議での発言量や自発的な提案の頻度といった行動変化も観察することで、より立体的に効果を把握できます。

まとめ

ワークエンゲージメントを高めるポイントは、佐々木さんの事例が示すように、仕事の意義の可視化、自律性の拡大、承認の仕組み化を段階的に進めることにあります。JD-Rモデルが教えるとおり、ストレスを減らすだけでなく、仕事の資源を増やすアプローチがエンゲージメント向上の本質です。

まずは今週、1on1で「この仕事のどこにやりがいを感じるか」をメンバー1人に聞いてみてください。1か月間続けることで、チームの状態が可視化され、次に何をすべきかが見えてきます。

小さな対話を積み重ねることで、バーンアウトを防ぎながら、チーム全体のパフォーマンス向上がスムーズに進みます。

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