デザイン思考とクリエイティブシンキングの違いとは?

デザイン思考とクリエイティブシンキングの違いとは? ビジネススキル

ー この記事の要旨 ー

  1. デザイン思考は課題解決のプロセス、クリエイティブシンキングは発想を広げる思考法です。まずはこの違いを押さえましょう。
  2. 違いは優劣ではなく守備範囲です。横並びで比べるより、「どの場面で何を担うのか」を見ると理解しやすくなります。
  3. この記事では両者の関係を図と表で整理しながら、実務で迷いやすい使いどころや考え方の違いを無理なく整理できます。

「結局どっちが上位概念なの?」がスッと解ける整理

デザイン思考は「ユーザー課題を発見し解決する」ための全体プロセス、クリエイティブシンキングは「枠を外してアイデアを広げる」発想技法です。前者の発想フェーズに後者が組み込まれる、入れ子の関係にあります。

つまり両者は対立する思考法ではありません。スコープ(守備範囲)の異なる、包含関係にある2つの概念です。

違いを一言でいうと

  • デザイン思考=課題解決のための「プロセス」(課題発見から検証まで)
  • クリエイティブシンキング=アイデア創出のための「発想技法」(広げる場面で使う)
  • 両者の関係=競合ではなく、デザイン思考の発想フェーズでクリエイティブシンキングがつながる包含関係

この包含関係を1枚の図にすると、次のようになります。

デザイン思考(課題解決の全体プロセス)
├ 共感(ユーザーを理解する)
├ 課題定義(解くべき問いを絞る)
├ 発想 ← ここでクリエイティブシンキングが主役
├ 試作(形にする)
└ 検証(試して学ぶ)

デザイン思考という大きな器の中の「発想する工程」で、クリエイティブシンキングが活躍します。違いを正しく捉える鍵は、両者を横並びで比べることではなく、どちらがどちらを含んでいるかという階層で見ることにあります。

この記事では、この包含関係を図と表で整理したうえで、課題のどの段階でどちらを使うのか、そして両者を回したときに手に入る成果物がどう違うのかまで、実務の判断軸に落とし込んでいきます。

多くの解説が「並べて終わり」になる理由

「デザイン思考 クリエイティブシンキング 違い」と検索したとき、最も多くの人がつまずくのは、定義を2つ読んでも結局どちらが上位概念なのか分からないという点です。

その原因は、解説の多くが両者の定義を左右に並べて「デザイン思考はこう、クリエイティブシンキングはこう」と紹介するだけで、両者の関係そのものを構造化していないことにあります。並列に置かれた瞬間、読者は「対等な別物」だと受け取ってしまいます。ところが実際の関係は対等ではなく、片方がもう片方を含んでいます。ここがズレたまま使い分けようとすると、混乱が続きます。

なお、デザイン思考そのものの全体像を先に押さえたい場合は、関連記事『デザイン思考とは?』で5段階のプロセスを解説しています。クリエイティブシンキング単体の中身を知りたい場合は、関連記事『クリエイティブシンキングとは?』が参考になります。

スコープで捉える:包含か、並列か

両者の関係を一段クリアにするために、まず「何をカバーする概念なのか」という守備範囲(スコープ)の違いから見ていきます。

観点 デザイン思考 クリエイティブシンキング
概念の種類 プロセス(一連の工程) 技法(特定場面のスキル)
守備範囲 課題発見→定義→発想→試作→検証 主に「発想」フェーズ
起点 ユーザーへの共感・課題定義 既成概念の打破・自由発想
体系化 スタンフォードd.school、IDEO ラテラルシンキング、ブレストなど技法群
問いの形 「本当の課題は何か」 「他の見方はないか」

表の通り、両者は同じ土俵にある競合概念ではありません。デザイン思考は課題発見から検証までの一連の流れを指す「プロセス」、クリエイティブシンキングはその中の特定場面で使う「技法」です。階層が違います。

デザイン思考は「プロセス」、クリエイティブシンキングは「技法」

この違いを日常の言葉に置き換えると分かりやすくなります。料理にたとえるなら、デザイン思考は「献立を決め、材料を選び、調理し、味見して仕上げる」という調理全体の段取りです。クリエイティブシンキングは、その中の「どんな料理にするか自由に発想する」場面で使う頭の使い方にあたります。

段取り全体と、その一場面で使うスキル。粒度がそもそも異なります。だからこそ「どっちが優れているか」という問いは噛み合いません。比べるべきは優劣ではなく、どの範囲を担う概念かなのです。

クリエイティブシンキングはデザイン思考の「一部」なのか

ここで多くの人が抱く核心的な疑問が、「クリエイティブシンキングはデザイン思考の一部なのか、それとも別物なのか」です。

答えは、その両方です。デザイン思考の5段階のうち「発想(Ideate)」のフェーズでは、まさにクリエイティブシンキングが中心的な役割を果たします。この意味でクリエイティブシンキングはデザイン思考の構成要素の一つです。

一方で、クリエイティブシンキングはデザイン思考の外でも単独で使えます。会議でアイデアを広げたいとき、商品名を考えるとき、デザイン思考の枠組みを持ち出さなくても、発想技法としてのクリエイティブシンキングだけを使う場面はいくらでもあります。

整理すると、デザイン思考の中ではクリエイティブシンキングが部品として組み込まれ、デザイン思考の外ではクリエイティブシンキングが独立して使える、という関係です。「一部か別物か」という二択ではなく、「文脈によってどちらにもなる」が正確な答えになります。

課題のどの段階で、どちらを使うのか

包含関係が分かると、次に知りたいのは「実務でどう使い分けるか」です。ここはスコープの違いを、課題に向き合う段階(フェーズ)に対応づけると判断しやすくなります。

課題のフェーズ 主に使う頭の使い方 やっていること
課題発見 デザイン思考(共感・観察) ユーザーを観察し、本当の困りごとを見つける
課題定義 デザイン思考(定義) 「解くべき問い」を一文に絞り込む
解決アイデア創出 クリエイティブシンキング 枠を外して選択肢を大量に広げる
試作・検証 デザイン思考(試作・検証) 形にして試し、反応から学ぶ

課題発見・定義の段階はデザイン思考が主役

課題発見と課題定義の段階では、デザイン思考の出番です。ここで求められるのは、ユーザーをよく観察し、表面的な要望の奥にある本当の課題を見極めることだからです。

この段階でいきなりアイデアを広げようとすると、「そもそも何を解決すべきか」が定まらないまま手数だけが増えてしまいます。デザイン思考が共感と課題定義から始まるのは、発想の前に「狙う的」を決めるためです。

解決アイデアを広げる段階でクリエイティブシンキングが効く

的が定まったあと、解決アイデアを生み出す段階では、クリエイティブシンキングが主役に交代します。「他の業界ならどうするか」「前提を逆にしたら」といった発想技法で、選択肢の幅を一気に広げる場面です。

この発想を広げる工程そのものは、拡散と収束という2つの動きで成り立っています。アイデアを広げる動きと絞り込む動きの違いは、関連記事『発散思考と収束思考の違いとは?』で整理しています。

ここで重要なのは、この発想フェーズもデザイン思考という大きなプロセスの「中」で起きているという点です。クリエイティブシンキングは独立して暴れているのではなく、課題定義で絞った的に向かって、アイデアの量を確保する役割を担っています。使い分けというより、大きな流れの中で重心が移る、と捉えると実態に近くなります。

回したときに「手に入るもの」が違う

プロセスか技法かという違いは、最終的に手元に残る成果物の違いとして表れます。ここは見落とされやすいのですが、実務で両者を選ぶときの判断軸になります。

デザイン思考を一周回すと、手に入るのは「検証済みの解決策」です。ユーザーの課題に対して、試作と検証を経た、ある程度筋の通った答えが残ります。アイデアの数より、的を射た一つの解の精度が成果になります。

クリエイティブシンキングを回すと、手に入るのは「発散したアイデア群」です。質より量、まず選択肢を広げることが目的なので、玉石混交のアイデアがたくさん残ります。そのままでは使えないものも含まれますが、その中から選び抜く前段階の素材が揃います。

「解決策の精度」と「アイデアの量」は別の成果

ここから見えるのは、両者に「どちらが良い成果か」という優劣はないということです。検証済みの解決策が欲しい場面と、まず選択肢を広げたい場面は、求めるものが違います。

会議で「アイデアが出ない」と困っているなら、必要なのはクリエイティブシンキングによる発散です。一方で「アイデアはたくさんあるが、どれも筋が悪い」なら、課題定義からやり直すデザイン思考の出番かもしれません。手に入れたい成果物から逆算すると、どちらに重心を置くべきかが見えてきます。

混同したまま使うと、どこでつまずくか

最後に、両者を混同したまま使ったときに起きやすいつまずきを、典型的なパターンで挙げておきます。違いを「知っている」状態から「間違えずに使える」状態へ進むには、失敗の形を知っておくのが近道です。

発想だけして、課題定義を飛ばすパターン

最もよくあるのが、クリエイティブシンキングだけを回して満足してしまうケースです。新規事業の会議で2時間ブレストしてアイデアは大量に出たのに、結局どの案も前に進まない。これはアイデア不足ではなく、「そもそも何を解決したかったのか」という課題定義が曖昧なまま発想に走ったために起きています。課題定義というデザイン思考の工程を飛ばすと、出たアイデアのどれを選ぶかが決められません。発想は的があって初めて成果になります。

プロセスを回せば自動でアイデアが出ると思い込むパターン

逆に、デザイン思考の5段階をなぞれば良いアイデアが出てくるはず、と段取りだけを信じてしまうケースもあります。プロセスは「いつ発想するか」の場所を用意してくれますが、その場で実際にアイデアを広げる頭の使い方、つまりクリエイティブシンキングの技法は別途必要です。器があっても、中身を生み出す技は自動では湧きません。

「枠を外す」を課題発見の段階でやってしまうパターン

発想技法は強力なので、つい早い段階から使いたくなります。ところが課題発見の段階で「枠を外したアイデア」を出し始めると、ユーザーの実態から離れた思いつきに走りがちです。自由な発想が活きるのは、解くべき問いが定まったあとです。順番を取り違えると、面白いが的外れな案ばかりが積み上がります。

これらのつまずきは、いずれも「プロセスのどの位置で、どちらの頭を使うか」を取り違えたときに起きています。包含関係と、フェーズごとの重心移動さえ押さえておけば、多くは先回りで避けられます。なお、デザイン思考と他の思考法との線引きをさらに整理したい場合は、関連記事『デザイン思考とロジカルシンキングの違い』もあわせて確認すると、出発点と進め方の差が見えてきます。

まとめ

デザイン思考とクリエイティブシンキングは、対立する2つの思考法ではなく、スコープの異なる入れ子の関係にあります。デザイン思考は課題発見から検証までをカバーするプロセス、クリエイティブシンキングはその発想フェーズで主役になる技法です。

使い分けの軸は3つに絞れます。まず、課題発見・定義の段階はデザイン思考、アイデアを広げる段階はクリエイティブシンキングと、フェーズで重心を移すこと。次に、検証済みの解決策が欲しいのか、まず選択肢を広げたいのか、手に入れたい成果物から逆算すること。そして、発想だけで終わらせない・段取りだけを信じない・順番を取り違えないという、混同が招くつまずきを先回りで避けることです。

今日からできる最初の一歩として、いま抱えている課題が「まだ的が定まっていない」のか「的は決まっていて選択肢が欲しい」のかを、一度書き出して見極めてみてください。どちらの段階にいるかが分かれば、デザイン思考とクリエイティブシンキングのどちらに重心を置くべきかは、自然と決まります。発想そのものをもっと広げたいときは、関連記事『イノベーション思考とは?』で発想法の引き出しを増やせます。

思考法の使い分けをさらに深めたいあなたへ

デザイン思考とクリエイティブシンキングの関係が整理できても、隣接する思考法との線引きで迷う場面は残ります。発想と検証の引き出しを増やす記事もあわせてご覧ください。

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