ー この記事の要旨 ー
- トリプルシンキングの鍛え方は、ロジカル・クリティカル・ラテラルの3つの思考法を段階的に習得し、日常業務で意識的に使い分ける訓練を重ねることで身につきます。
- 本記事では、各思考法の鍛え方とメリット・デメリット、挫折しないためのコツを具体的なトレーニング方法とともに解説します。
- 週1回15分の振り返りから始めることで、3〜6か月後には会議での発言や提案の質に変化を実感できるようになります。
トリプルシンキングを鍛えるとは
トリプルシンキングを鍛えるとは、ロジカルシンキング・クリティカルシンキング・ラテラルシンキングの3つの思考法を意識的に使い分けられるよう、日常業務の中で訓練を重ねることです。単に知識として理解するだけでなく、実際のビジネス場面で自然に切り替えられる状態を目指します。
ここでは、営業推進部門で新規開拓を担当する中村さん(20代後半・若手リーダー)の事例を通じて、トリプルシンキングを鍛えた成果のイメージを紹介します。
中村さんのチームは、新規開拓の成約率が伸び悩んでいました。まずロジカルシンキングを活用し、過去半年分の商談データを「業界別」「企業規模別」「商談フェーズ別」に分類。すると、従業員300名以下の製造業で成約率が特に低いことが判明しました。
次にクリティカルシンキングで「製造業は予算が厳しいから成約しにくい」という社内の通説を検証。実際のデータを確認したところ、予算ではなく「導入後の運用体制への不安」が失注理由の大半を占めていると気づきました。注目すべきは、表面的な理由の裏に本当の課題が隠れていたという点です。
そこでラテラルシンキングを用いて、従来の「機能紹介中心の提案」から「導入後3か月間の伴走支援プラン付き提案」へとアプローチを転換。結果として、製造業セグメントの成約率が改善しました。
※本事例はトリプルシンキングの活用イメージを示すための想定シナリオです。
トリプルシンキングの鍛え方の全体像
トリプルシンキングを鍛える際に見落としがちですが、3つの思考法を同時に習得しようとすると挫折しやすくなります。効果的なアプローチは、1つの思考法から始めて基礎を固め、徐々に他の思考法を追加していく段階的な方法です。
最初の1か月はロジカルシンキングに集中し、情報を整理して論理的に伝える習慣をつけます。2〜3か月目でクリティカルシンキングを追加し、前提を疑う視点を養います。4か月目以降にラテラルシンキングを組み込み、3つの思考法を状況に応じて切り替える練習を始めるのが現実的な進め方です。
本記事で解説する内容と公開済み記事との棲み分け
3つの思考法それぞれの詳細な特徴と使い分けの判断基準については、関連記事「トリプルシンキングとは?3つの思考法の特徴と使い分け」で詳しく解説しています。本記事では、「メリット・デメリット」と「具体的なトレーニング法」に焦点を当てて解説します。
これからトリプルシンキングを習得したい方、すでに基礎は理解しているがトレーニング方法に悩んでいる方を対象に、実践的な鍛え方をお伝えします。
トリプルシンキングを鍛える4つのメリット
トリプルシンキングを鍛えるメリットは、問題解決力の向上、意思決定の質向上、説得力の強化、キャリア選択肢の拡大の4点です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
問題解決のスピードと精度が上がる
複雑な課題に直面したとき、1つの思考法だけでは解決策にたどり着くまでに時間がかかります。トリプルシンキングを身につけると、課題の性質を見極めて適切な思考法を選べるようになり、問題解決のスピードが上がります。
たとえば、データを整理する段階ではMECE(ミーシー:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)を意識したロジカルシンキングで漏れなく分類し、仮説の妥当性を検証する段階ではクリティカルシンキングで前提を吟味する。この切り替えがスムーズにできると、同じ課題でも解決までの時間が短縮されます。
意思決定の質が向上する
意思決定の場面では、論理的な根拠だけでなく、その根拠自体が正しいかどうかの検証も求められます。トリプルシンキングを鍛えると、「自分の判断に偏りがないか」を客観視するメタ認知(自分自身の思考プロセスを俯瞰して捉える能力)が働くようになります。
ロジカルシンキングで選択肢を整理し、クリティカルシンキングでリスクを洗い出し、ラテラルシンキングで別の可能性を検討する。このプロセスを経ることで、意思決定の質が底上げされます。
チーム内での説得力が増す
会議での発言やプロジェクトの提案において、論理的な説明ができるだけでなく、想定される反論にも事前に対処できると説得力が増します。トリプルシンキングを身につけると、自分の提案を組み立てながら「どこに穴があるか」を自己点検できるようになります。
率直に言えば、説得力のある発言ができる人は、チーム内での信頼を得やすく、発言の機会も増えていきます。これが成果につながり、さらに信頼が高まるという好循環を生み出します。
キャリアの選択肢が広がる
トリプルシンキングは、業界や職種を問わず活用できるポータブルスキル(転職や異動後も通用する汎用的なスキル)です。論理的に整理する力、前提を疑う力、新しい発想を生み出す力は、営業、企画、エンジニアリング、バックオフィスなど、どの領域でも求められます。
IT部門でシステム障害の原因分析にロジカルシンキングを使い、経理部門で既存の業務フローをクリティカルシンキングで見直し、バックオフィス全体の効率化にラテラルシンキングで新しい仕組みを提案する。このように、配属先が変わっても思考力は資産として残ります。
トリプルシンキングの3つのデメリットと注意点
トリプルシンキングのデメリットは、習得に時間を要すること、使い分けの判断に迷いやすいこと、完璧主義に陥りやすいことの3点です。これらを事前に理解しておくと、トレーニングの途中で挫折するリスクを減らせます。
習得に時間がかかる
トリプルシンキングは、知識として理解するだけなら数時間で可能ですが、実務で自然に使いこなせるようになるには3〜6か月程度の継続的な実践が必要です。短期間で成果を求めすぎると、「効果が出ない」と感じて挫折しやすくなります。
正直なところ、1〜2週間で劇的な変化を期待するのは現実的ではありません。思考の習慣を変えるには、意識的に繰り返す期間が必要だと最初から理解しておくことが大切です。
使い分けの判断に迷うことがある
3つの思考法を学ぶと、「今はどの思考法を使うべきか」と迷う場面が出てきます。特に複雑な課題では、ロジカルに整理すべきかクリティカルに検証すべきか、判断に時間がかかることがあります。
この迷いは習熟度が上がるにつれて減っていきます。最初は「まずロジカルで整理、次にクリティカルで検証、最後にラテラルで発想」という順序を固定しておくと、迷いが軽減されます。
完璧を求めすぎると逆効果になる
「3つの思考法を正しく使えているか」を気にしすぎると、肝心の課題解決が進まなくなります。フレームワークの使い方にこだわりすぎて、議論が前に進まないケースも見られます。
トリプルシンキングはあくまでツールであり、目的ではありません。「この課題を解決するために、今どの思考法が役立つか」という視点を持ち続けることで、手段と目的が逆転するのを防げます。
トリプルシンキングを鍛える具体的な方法
トリプルシンキングを鍛える具体的な方法は、各思考法に適したトレーニングを日常業務に組み込み、1つずつ習慣化していくことです。ここでは、ロジカル・クリティカル・ラテラルそれぞれの鍛え方を紹介します。
ロジカルシンキングの鍛え方
報告メールを送る前に「結論→理由→具体例」の構成になっているか確認する。これだけでロジカルシンキングのトレーニングになります。1日1回、送信前の30秒を使って構成をチェックする習慣をつけてみてください。
会議の議事録を取る際に、発言内容を「事実」「意見」「アクション」に分類する練習も威力を発揮します。情報を構造化する力が養われ、ロジックツリーやMECEを使った整理も自然にできるようになります。
クリティカルシンキングの鍛え方
「なぜそう言えるのか」「本当にそうか」と問いかける習慣がクリティカルシンキングを鍛えます。上司や同僚の発言、ニュース記事、自分自身の提案に対しても、根拠と結論のつながりを意識して検証してみてください。
提案資料を作成したら、自分がその提案に反対する立場だったらどう指摘するかを考えてみましょう。5分間だけ「反対意見を出す係」になりきることで、思い込みに気づきやすくなります。
ラテラルシンキングの鍛え方
「もし制約がなかったら」「逆にしたらどうなるか」と問いかける。これがラテラルシンキングを鍛える基本です。心理学者エドワード・デ・ボーノが提唱したこの水平思考は、既存の枠組みを離れて発想を広げる訓練になります。
SCAMPER法(スキャンパー法:代用・結合・応用・修正・転用・削減・逆転の7つの視点でアイデアを発想する手法)を使った練習も成果が出やすいアプローチです。既存の商品やサービスに対して「組み合わせられないか」「逆にできないか」と問いかけ、アイデアを出す練習を週に1回取り入れてみてください。
実践で活きる3つのトレーニング習慣
トリプルシンキングを実務で活かすには、日常業務の中に練習を組み込む習慣が欠かせません。週1回の振り返り、会議での問いかけ、異分野の情報収集の3つの習慣を紹介します。
週1回の振り返りノートをつける
金曜日の退勤前に15分、その週の業務を振り返る時間を設けます。「今週、ロジカルに整理できた場面はどこか」「クリティカルに検証すべきだったのに見逃した場面はないか」「ラテラルな発想で突破口を見つけた場面はあったか」と問いかけながら、ノートやメモアプリに記録します。
この振り返りを続けると、自分の思考パターンの偏りが見えてきます。「ロジカルは得意だけれどラテラルが弱い」といった傾向がわかれば、翌週は意識的に弱点を補うトレーニングに時間を割けます。
会議で「問いかけ役」を意識する
会議中に「なぜその結論になるのですか」「別の方法はありませんか」と問いかける役割を意識的に担ってみてください。クリティカルシンキングとラテラルシンキングを同時に鍛えられます。
注目すべきは、問いかけを受けた側も思考が深まるという点です。チーム全体の議論の質が上がり、自分自身のトレーニングにもなる一石二鳥の方法といえます。ただし、あら探しにならないよう、建設的な問いかけを心がけることがポイントです。
異分野の情報に触れる時間を確保する
ゼロベース思考(既存の前提を取り払い、白紙の状態から考え直す思考法)を養うには、普段触れない領域の情報に接することが有効です。週に30分でも、異業種のビジネスモデルや海外の事例、まったく関係のない分野の書籍に触れる時間を確保してみてください。
ITエンジニアがPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)のテキストを読む、経理担当者がデザイン思考の入門書を手に取る。こうした越境的なインプットが、ラテラルシンキングの引き出しを増やします。
トレーニングで挫折しないための3つのコツ
トリプルシンキングのトレーニングで挫折しないコツは、1つの思考法から始める、成果ではなくプロセスに注目する、フィードバックをもらえる相手を見つけるの3点です。
1つの思考法から始める
3つの思考法を同時に習得しようとすると、どれも中途半端になりやすいパターンがよくあります。最初の1か月はロジカルシンキングだけに集中し、「結論→理由→具体例」の構成で話す・書くを徹底してみてください。
1つの思考法が習慣として定着したら、次の思考法を追加します。この段階的なアプローチのほうが、結果的に3つすべてを身につける近道になります。
成果ではなくプロセスに注目する
「会議での発言が評価された」「提案が通った」といった成果にフォーカスすると、成果が出ないときにモチベーションが下がります。トレーニング初期は、「今日は報告メールの構成を意識できた」「反対意見を自分で考えてみた」といったプロセスに注目するほうが継続しやすくなります。
実は、プロセスの積み重ねが成果につながるまでにはタイムラグがあります。2〜3か月後に「気づいたら会議での発言がスムーズになっていた」という形で効果を実感するケースが多いです。
フィードバックをもらえる相手を見つける
独学だけでは、自分の思考の癖に気づきにくいという限界があります。上司、先輩、同僚など、率直にフィードバックをくれる相手を1人見つけておくと、トレーニングの精度が上がります。
「この提案のロジックに穴はありませんか」「別の視点から見て気になる点はありますか」と具体的に聞くことで、相手も答えやすくなります。月に1回でも振り返りの機会を持てると、成長のスピードが変わってきます。
よくある質問(FAQ)
トリプルシンキングはどれから始めるべき?
まずロジカルシンキングから始めることで、思考を整理する土台が身につきます。
ロジカルシンキングは他の2つの思考法を活かすための基盤となります。情報を構造化できないと、クリティカルシンキングで検証すべきポイントを特定しにくく、ラテラルシンキングで出たアイデアを整理・説明するのも難しくなるためです。
ただし、すでに論理的な説明が得意な方は、自分の弱点を補う思考法から始めるのも一案です。
習得にどのくらい時間がかかる?
基本的な理解は数時間で可能ですが、実務で自然に使いこなせるようになるには3〜6か月程度が目安です。
最初の1か月は1つの思考法に集中し、2〜3か月目で別の思考法を追加、4か月目以降で組み合わせを意識するステップを踏むと、無理なく習得できます。
週1回15分の振り返り時間を設けるだけでも、半年後には思考の変化を実感できるようになります。
独学でも身につけられる?
独学でも基礎は身につけられますが、フィードバック環境があると習得が早まります。
書籍やオンライン講座で知識をインプットし、日常業務で実践するサイクルを回すことで、独学でも一定のレベルまで到達できます。
ただし、自分の思考の癖に気づくには、第三者の視点が役立ちます。上司や同僚に「この論理展開で問題ないか」と確認する習慣を持つとよいでしょう。
ロジカルとクリティカルはどちらを先に鍛えるべき?
先にロジカルシンキングを鍛えることで、クリティカルシンキングの土台ができます。
論理的に情報を整理できないと、「どの前提を検証すべきか」の判断が難しくなります。まずロジカルシンキングで構造化する力を身につけ、その上でクリティカルシンキングの検証力を追加していくのが効率的です。
両方を並行して鍛えようとすると、どちらも中途半端になりやすい点に注意してください。
トレーニングの効果を実感できる目安は?
継続的に取り組んでいれば、2〜3か月後に「会議での発言がスムーズになった」と感じることが多いです。
最初の1か月は「意識しているけれど、うまく使えていない」という感覚が続くことがあります。2か月目以降に「前提を疑う視点が自然と働くようになった」「報告が簡潔になったと言われた」といった変化が現れ始めます。
焦らず継続することが、効果を実感するための近道です。
トリプルシンキングに向き不向きはある?
向き不向きよりも、継続できるかどうかが習得の分かれ目になります。
論理的な思考が苦手だと感じる人でも、1つの思考法から段階的に取り組めば習得は可能です。逆に、論理的な思考が得意な人でも、継続しなければラテラルシンキングの発想力は身につきません。
どの思考法にも苦手意識がある場合は、まず「結論→理由→具体例」の構成で話す練習から始めてみてください。
まとめ
トリプルシンキングを鍛えるポイントは、中村さんのように営業データをロジカルに整理し、「そもそもこの前提は正しいか」とクリティカルに検証し、従来とは異なるアプローチをラテラルに発想するという流れを意識することにあります。
最初の1か月はロジカルシンキングに集中し、週1回15分の振り返り時間を設けてみてください。「今日はどの思考法を使ったか」を記録するだけでも、自分の思考パターンが見えてきます。
小さな実践を積み重ねることで、3〜6か月後には会議での発言や提案の質に変化を実感できるようになります。

