eNPSとは?計算方法・質問項目・NPSとの違いを解説

eNPSとは?計算方法・質問項目・NPSとの違いを解説 組織開発

ー この記事の要旨 ー

  1. eNPSは従業員が自社を他者に推奨する度合いを数値化した指標で、組織の健康状態を把握するのに役立ちます。
  2. 本記事では、eNPSの計算方法、質問項目の設計、NPSとの違いを整理し、導入から改善までの実践ステップを解説します。
  3. eNPSを活用することで、従業員エンゲージメントの課題を可視化し、離職防止や組織活性化につなげる具体的な方法がわかります。

eNPSとは

eNPS(Employee Net Promoter Score)とは、従業員が自社を家族や友人に勧めたいと思う度合いを数値化した指標です。

もともとNPS(Net Promoter Score)は顧客ロイヤルティを測定するために開発されたフレームワークで、フレデリック・ライクヘルドがベイン・アンド・カンパニー在籍時に提唱しました。このNPSを従業員向けに応用したものがeNPSです。シンプルな1問の質問で従業員エンゲージメントを定量化できる点が特徴で、多くの企業が組織診断の一環として採用しています。

eNPSの定義と意味

「あなたはこの会社を親しい友人や家族にどの程度勧めたいですか?」——この質問に対する回答を0〜10の11段階で集計し、スコア化したものがeNPSです。

注目すべきは、単なる満足度ではなく「推奨意向」を問う点。自分が働く会社を他者に勧められるかどうかは、給与や福利厚生だけでなく、職場環境、成長機会、人間関係など複合的な要素が影響します。つまり、eNPSは従業員が組織に対して抱く総合的な愛着やロイヤルティを反映する指標といえるでしょう。

eNPSが注目される背景

ここ数年、eNPSへの注目度が高まっている背景には、人的資本経営への関心の高まりがあります。

企業が持続的に成長するには、従業員一人ひとりが意欲を持って働ける環境が前提となります。離職率の上昇や採用難が経営課題となるなか、従業員エンゲージメントを定量的に把握し、改善につなげる仕組みとしてeNPSが選ばれるケースが増えています。実務の現場では、四半期ごとにeNPSを測定し、経年変化を追跡する企業も珍しくありません。

※本記事で紹介するeNPS活用の想定シナリオを示します。

IT企業の人事部門に所属する田中さんは、直近1年で若手社員の離職が続いていることに頭を悩ませていました。退職面談では「特に不満はなかった」という声が多く、本音が見えないまま対策が打てずにいたのです。そこで田中さんはeNPS調査の導入を提案。初回調査の結果、スコアは−15と低く、特に「成長機会」に関する自由記述でネガティブな意見が集中していました。この結果を受けて、キャリア面談の頻度を月1回に増やし、社内公募制度を整備。半年後の再調査ではスコアが−5まで改善し、離職の兆候も減少傾向に転じました。

※本事例はeNPS活用イメージを示すための想定シナリオです。

製造業の品質管理部門では、部署別のeNPSを比較し、スコアが低いチームにはマネージャー向けの1on1研修を実施することで、組織全体のエンゲージメント底上げを図っています。

eNPSの計算方法

eNPSの計算式は、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値です。

計算自体は非常にシンプルですが、正確なスコアを算出するには回答の分類基準を正しく理解しておく必要があります。ここでは計算の手順、分類の考え方、スコアの解釈について順を追って説明します。

計算式と算出の手順

推奨者の割合から批判者の割合を引く。これがeNPSの計算式です。

eNPS = 推奨者の割合(%) − 批判者の割合(%)

たとえば、100人の従業員にアンケートを実施し、推奨者が30人、中立者が50人、批判者が20人だった場合、推奨者の割合は30%、批判者の割合は20%となり、eNPSは+10となります。スコアは−100から+100の範囲で表され、プラスであれば推奨者が批判者を上回っている状態を示します。

推奨者・中立者・批判者の分類基準

回答は0〜10の11段階評価で収集し、以下のように分類します。

**推奨者(Promoter)**は9〜10点をつけた従業員で、会社に対して高いロイヤルティを持ち、積極的に他者へ推奨する可能性が高いグループです。

**中立者(Passive)**は7〜8点をつけた従業員で、特に不満はないものの、強い愛着があるわけでもない層。転職市場で魅力的なオファーがあれば離職するリスクを抱えています。

**批判者(Detractor)**は0〜6点をつけた従業員で、会社に対してネガティブな感情を持っている可能性が高く、口コミで悪い評判を広めるリスクも考えられます。

ここがポイントです。中立者はスコア計算には含まれませんが、放置すると批判者に転じる可能性があるため、フォローアップの対象として意識しておく必要があります。

スコアの解釈と目安

「うちのスコアは−10だけど、これって良いの?悪いの?」——この疑問を持つ人事担当者は多いでしょう。

eNPSのスコアは業界や企業規模によって異なるため、絶対的な良し悪しを判断しにくい側面があります。実務では、自社の過去スコアとの比較(経年変化)や、部署間・年代別の比較に重点を置くケースがよくあります。たとえば、全社スコアが−10でも、特定の部署だけ−40であれば、その部署に固有の課題がある可能性が高いと判断できます。ベンチマークとして他社データを参照する場合は、同業界・同規模の企業と比較することで、より意味のある示唆が得られるでしょう。

eNPSとNPSの違い

eNPSとNPSの最大の違いは、測定対象が「従業員」か「顧客」かという点です。

両者は同じ計算ロジックを使いますが、目的や活用シーンが異なります。混同されやすいため、ここで整理しておきましょう。

測定対象の違い

NPS(Net Promoter Score)は顧客を対象に「この商品・サービスを友人や同僚に勧めますか?」と質問し、顧客ロイヤルティを測定します。一方、eNPSは従業員を対象に「この会社を友人や家族に勧めますか?」と質問し、従業員ロイヤルティを測定します。

質問文の構造は似ていますが、測定しているものがまったく異なる点を押さえておいてください。

活用目的の違い

NPSは主にマーケティングやカスタマーサクセスの領域で活用され、顧客体験の改善やリピート率向上を目指します。対してeNPSは人事・組織開発の領域で活用され、従業員エンゲージメント向上や離職防止を目的としています。

実務の現場では、NPSとeNPSを両方測定し、顧客満足と従業員満足の相関を分析する企業もあります。「従業員がやりがいを感じている会社は、顧客サービスの質も高い」という仮説を検証するためです。

eNPS調査の質問項目

eNPS調査の質問項目は、核となる1問と補足質問で構成するのが基本です。

シンプルさがeNPSの強みですが、スコアだけでは改善のヒントが得られません。補足質問を適切に設計することで、具体的なアクションにつなげやすくなります。

基本の質問文

1問だけで従業員エンゲージメントを測定できる点がeNPSの特徴です。

「あなたは現在の勤務先を親しい友人や家族にどの程度勧めたいと思いますか?」

回答は0〜10の11段階で収集します。0が「まったく勧めたくない」、10が「非常に勧めたい」を意味します。この質問文は世界共通で使われており、ベンチマーク比較を行う際にも一貫性が保たれます。

補足質問の設計ポイント

スコアの背景を深掘りするために、2〜5問程度の補足質問を追加することを検討してみてください。

見落としがちですが、補足質問を増やしすぎると回答負荷が上がり、回答率が下がるリスクがあります。質問数は最小限に絞り、本当に知りたいことだけを聞くのが鉄則です。

補足質問の例としては、「そのスコアをつけた理由を教えてください」という自由記述形式がよく使われます。また、「職場環境」「成長機会」「上司との関係」「報酬・評価」など、改善施策に直結するテーマに絞った選択式質問を追加する方法もあります。

質問項目のテンプレート例

以下は、eNPS調査で使われる典型的な質問項目のテンプレートです。

必須質問 ・あなたは現在の勤務先を親しい友人や家族にどの程度勧めたいと思いますか?(0〜10)

推奨する補足質問 ・そのスコアをつけた主な理由を教えてください(自由記述) ・職場環境についてどのように感じていますか?(5段階評価) ・成長やキャリアアップの機会は十分にあると感じますか?(5段階評価) ・上司やチームメンバーとのコミュニケーションは円滑ですか?(5段階評価)

正直なところ、自由記述の回答には改善のヒントが詰まっています。数値だけでなく、従業員の声を丁寧に読み解く姿勢が大切です。

eNPS導入のメリットとデメリット

eNPS導入のメリットは、シンプルな指標で従業員エンゲージメントを可視化できる点にあります。一方で、スコアだけに頼ると本質を見誤るリスクもあります。

導入によって得られる4つのメリット

eNPSを導入することで得られる主なメリットは、シンプルさによる高い回答率、経年比較のしやすさ、部署別分析による課題特定、人的資本経営の指標としての活用の4点です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

シンプルさによる高い回答率 質問が1問(補足を含めても数問)と少ないため、従業員の負担が軽く、回答率が高くなりやすい傾向があります。従来の従業員満足度調査は数十問に及ぶことも多く、回答疲れ(サーベイ疲れ)が課題でした。eNPSはその問題を解消できます。

経年比較のしやすさ スコアが1つの数値で表されるため、四半期ごと、年次ごとの変化を追跡しやすい点も強みです。施策の効果を定量的に検証できるため、PDCAサイクルを回しやすくなります。

部署別分析による課題特定 全社スコアだけでなく、部署別・年代別・役職別にセグメント分析を行うことで、どこに課題があるかを特定できます。全社施策と部署固有の施策を使い分けることで、改善の精度が上がります。

人的資本経営の指標としての活用 近年注目される人的資本経営の文脈で、eNPSを非財務指標の1つとして開示する企業も増えています。投資家や求職者に対して、組織の健康状態を示すエビデンスとして活用できます。

押さえておきたい3つのデメリット

一方で、eNPSには限界もあります。スコアの単純化による情報の欠落、外部要因の影響、形骸化のリスクの3点を理解しておく必要があります。

スコアの単純化による情報の欠落 1つの数値に集約されるため、なぜそのスコアになったのかという背景が見えにくいという課題があります。補足質問や自由記述を組み合わせなければ、改善の方向性が定まりません。

外部要因の影響 景気動向、業界全体のトレンド、競合他社の動きなど、自社の施策とは関係のない要因でスコアが変動することもあります。スコアの変化を解釈する際は、外部環境も考慮する必要があります。

形骸化のリスク 調査を実施するだけで、結果を活用した施策につなげなければ、従業員の不信感を招きます。「また調査か」「どうせ何も変わらない」という声が出始めると、回答の質も低下します。

eNPS調査の実施方法

eNPS調査は、準備・実施・分析・アクションの4ステップで進めます。

調査を形骸化させないためには、事前の設計と、結果を受けたフォローアップがポイントとなります。ここでは実施の流れを具体的に解説します。

実施前の準備事項

調査を始める前に、目的の明確化、質問項目の設計、実施方法の決定を行います。

大切なのは、「なぜeNPSを測定するのか」を経営層と人事部門で共有しておくことです。目的が曖昧なまま調査を始めると、結果の活用方針が定まらず、形骸化しやすくなります。たとえば「離職率を〇%下げるための課題を特定する」「新人定着率を改善するための施策を検討する」など、具体的なゴールを設定しておくと、分析の軸が明確になります。

また、匿名性の担保も重要な準備事項。従業員が本音で回答できるよう、回答者が特定されない仕組みを整えておく必要があります。

調査の実施ステップ

ある企業では、告知メールを送った翌日に回答率が急上昇したという事例があります。

調査の実施は、告知・配信・回収・分析・フィードバックの流れで進めます。告知の段階では、調査の目的、回答期間、匿名性の担保について従業員に明確に伝えます。「なぜこの調査を行うのか」「回答がどう活用されるのか」を事前に説明することで、回答率と回答の質が向上します。

回答期間は1〜2週間程度が目安。期間が短すぎると回答漏れが増え、長すぎると後回しにされるパターンがよくあります。期間中にリマインドを1〜2回送ることで、回答率を高められます。

実施頻度とタイミング

eNPS調査の実施頻度は、四半期に1回または半年に1回が一般的です。

実は、頻度を上げすぎるとサーベイ疲れを招くリスクがあります。eNPSは1問で完結するシンプルな調査ですが、補足質問を含めると負荷が増えるため、パルスサーベイ(短い質問を高頻度で実施する調査)と組み合わせて運用する企業もあります。たとえば、eNPSは半年に1回、パルスサーベイは月1回という形で使い分けることで、継続的なモニタリングと深掘り分析を両立できます。

eNPSスコアを改善する施策

eNPSスコアを改善するには、まず原因を特定し、優先度の高い課題から対処することが鍵です。

スコアが低いこと自体は問題ではなく、そこから何を読み取り、どう動くかが重要です。ここでは原因分析の方法と、具体的な改善アクションを解説します。

スコアが低い場合の原因分析

スコアが低い場合、まず自由記述の回答を丁寧に読み込むことから始めます。

数値だけでは「何が問題か」がわかりません。自由記述には、従業員が感じている不満や期待が具体的に表れています。たとえば「評価基準が不透明」「成長機会がない」「上司とのコミュニケーションが不足している」といったコメントが多ければ、それが改善の優先テーマになります。

部署別・年代別のセグメント分析も課題の絞り込みに役立ちます。全社スコアが−10でも、20代だけ−30であれば、若手社員に固有の課題があると推測できます。

改善に向けた具体的アクション

原因が特定できたら、具体的な施策を検討します。

「成長機会がない」という声が多い場合は、キャリア面談の頻度を増やす、社内公募制度を整備する、スキルアップ研修を拡充するといった施策が考えられます。「上司との関係」がネックであれば、マネージャー向けの1on1ミーティング研修を実施する、フィードバックの質を高めるトレーニングを導入する方法があります。

ここが落とし穴で、施策を打ちっぱなしにしてしまうケースが少なくありません。施策実施後は必ず次回調査でスコアの変化を確認し、効果を検証することが大切です。心理的安全性(チーム内で自分の意見を安心して発言できる状態)が確保された環境づくりも、長期的なスコア改善に寄与します。

よくある質問(FAQ)

eNPSの平均スコアはどれくらいですか?

eNPSの平均スコアは業界や地域によって大きく異なります。

日本企業ではマイナスになることが多く、−20〜−40程度が珍しくありません。これは日本人の回答傾向として中間点(5〜6点)を選びやすい傾向があるためです。他社との比較よりも、自社の経年変化や部署間比較に重点を置くことで、より実践的な示唆が得られます。

eNPS調査の実施頻度はどれくらいが適切ですか?

四半期に1回または半年に1回が一般的な実施頻度です。

頻度が高すぎるとサーベイ疲れを招き、回答率や回答の質が低下するリスクがあります。パルスサーベイと組み合わせ、eNPSは半年に1回、簡易質問は月1回という運用も選択肢の1つです。自社の規模や文化に合わせて調整してください。

eNPSが低い場合、まず何から取り組むべきですか?

自由記述の回答を読み込み、不満の根本原因を特定することが最優先です。

スコアの数値だけを見て施策を打っても、的外れになりがちです。「何が問題か」を従業員の声から読み取り、優先度の高いテーマから対処してください。部署別・年代別のセグメント分析も、課題の絞り込みに役立ちます。

eNPSと従業員満足度調査はどう違いますか?

eNPSは「推奨意向」を、従業員満足度調査は「満足度」を測定します。

満足度が高くても推奨意向が低いケースは珍しくありません。たとえば「今の待遇には満足しているが、友人に勧めるほどではない」という状態です。eNPSは満足度の先にある「愛着」や「ロイヤルティ」を測る指標と位置づけるとわかりやすいでしょう。

eNPS調査で回答率を高めるにはどうすればよいですか?

調査の目的と匿名性を事前に明確に伝えることが成果につながります。

「なぜ調査を行うのか」「回答がどう活用されるのか」を説明し、結果に基づいて実際に施策を実行することで、従業員の信頼を得られます。回答期間中に1〜2回リマインドを送ることも、回答率向上に寄与します。

eNPS調査は匿名で実施すべきですか?

従業員が本音で回答できるよう、匿名での実施を推奨します。

回答者が特定される懸念があると、当たり障りのない回答が増え、調査の意味が薄れます。ただし、部署別・年代別の分析を行うために、属性情報(部署名、勤続年数など)は取得しておくと分析の幅が広がります。

まとめ

eNPSで成果を出すポイントは、田中さんの事例が示すように、シンプルな1問で従業員の本音を引き出し、自由記述から課題を特定し、具体的な施策に落とし込むという流れにあります。スコアそのものより、スコアの背景を読み解き、アクションにつなげることが本質です。

まずは初回調査を実施し、3か月後に同じ質問で再測定してみてください。施策の効果を数値で確認できれば、次のアクションの精度も上がります。

小さな改善を積み重ねることで、従業員エンゲージメントの向上と離職率低下を両立できます。

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