ー この記事の要旨 ー
- タイムブロッキングは、1日のスケジュールを時間単位でブロック化し、各時間帯に特定の作業を割り当てることで集中力と生産性を高める時間管理術です。
- 本記事では、タイムブロッキングの基本から実践手順、よくある失敗パターンと継続のコツまで、すぐに使える情報を解説しています。
- この記事を読むことで、マルチタスクに追われる働き方から脱却し、成果を出しながらプライベート時間も確保できる時間の使い方が身につきます。
タイムブロッキングとは?定義と基本的な考え方
タイムブロッキングとは、1日のスケジュールを時間単位で区切り、各時間帯に特定の活動を割り当てる時間管理手法です。「午前9時〜11時は企画書作成」「午後2時〜3時はメール処理」というように、事前に時間の用途を決めておくことで、計画と実行のギャップを埋めることができます。
本記事では、タイムブロッキングの実践手順と活用方法に焦点を当てて解説します。時間管理術の全体像については関連記事「時間管理術を体系的に学ぶ」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
タイムブロッキングの定義
「時間から出発してタスクを配置する」という発想がタイムブロッキングの核心です。ToDoリストを作って「空いた時間にやろう」と考えるのではなく、カレンダー上で時間を先に確保し、そこにタスクを割り当てます。
この手法が威力を発揮する背景には、「パーキンソンの法則」があります。仕事は与えられた時間いっぱいまで膨張するという法則で、締め切りを設けないと作業がダラダラと長引いてしまう現象を指します。タイムブロッキングでは、各タスクに時間枠を設けることで、この膨張を防ぎます。
ここがポイントですが、タイムブロッキングは「1日をすべてカチカチに埋める」ことが目的ではありません。むしろ、本当に集中すべき作業に時間を確保し、それ以外の時間を柔軟に使えるようにすることが狙いです。
タイムボクシングとの違い
両者は混同されがちですが、視点が異なります。タイムブロッキングは「時間帯」を起点に設計し、1日や1週間を俯瞰してどの時間帯に何をするかを決めます。一方、タイムボクシングは「個別タスク」を起点にし、特定のタスクに「この2時間で終わらせる」という時間制限を設けて完了を目指します。
実務では、両者を組み合わせて使うケースが多いです。週単位ではタイムブロッキングで全体設計し、日々の作業ではタイムボクシングで個別タスクに取り組むという使い分けが成果につながります。タイムボクシングの詳細は関連記事「タイムボクシングとは?」をご覧ください。
タイムブロッキングで得られる4つのメリット
タイムブロッキングのメリットは、①集中力の向上、②時間の可視化、③マルチタスクからの解放、④ワークライフバランスの改善、の4点に集約されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
集中力の向上とディープワークの実現
深い集中状態を意図的に作り出せる。これがタイムブロッキング最大の価値です。ジョージタウン大学のカル・ニューポート教授が提唱した「ディープワーク」(認知的に負荷の高い作業に気を散らさず集中する状態)を実現するには、まとまった時間の確保がポイントとなります。
詳しくは関連記事『ディープワークとは?』で解説しています。
「午前中の2時間は企画書に集中する」と決めておけば、その時間はメールチェックや突発的な相談を後回しにできます。事前に時間を確保しておくことで、「今やっていいこと」と「後でやるべきこと」の判断に迷わなくなります。
実は、この「迷いの削減」自体が集中力を高める要因になります。人間の脳は判断を繰り返すと疲弊するため、事前に決めておくことで認知資源を本来の作業に振り向けられるのです。
時間の可視化による計画精度の向上
「このタスクに何時間かかるか」という見積もり精度が向上する。タイムブロッキングを続けることで得られるこの効果は、長期的な生産性向上に直結します。カレンダー上で時間を可視化することで、自分の時間の使い方を客観的に把握できるようになるためです。
週末に1週間のカレンダーを振り返ると、「会議に思った以上に時間を取られている」「集中作業の時間が足りていない」といった気づきが得られます。この気づきをもとに翌週の時間配分を調整することで、徐々に計画の精度が上がっていきます。
マルチタスクからの解放
メール、チャット、会議、資料作成を同時並行で進める。現代のビジネス環境ではこうした働き方が求められがちですが、マルチタスクは生産性を下げることが研究で明らかになっています。
カリフォルニア大学アーバイン校の研究によると、作業中に中断されると、元の集中状態に戻るまでに平均23分かかることが分かっています。この「タスクスイッチングコスト」と呼ばれる認知的負荷が、マルチタスクの非効率さの正体です。
タイムブロッキングでは、各時間帯に一つの活動だけを割り当てます。「この時間はメール対応」「この時間は資料作成」と決めておくことで、シングルタスクでの作業が可能になり、切り替えのロスを削減できます。
ワークライフバランスの改善
仕事だけでなくプライベートの時間確保にも使える。これがタイムブロッキングの見落とされがちな価値です。「18時以降は家族との時間」「土曜午前は運動」というように、仕事以外の活動にも時間ブロックを設けることで、ワークライフバランスを意識的に設計できます。
「残業しないと終わらない」という感覚は、時間の見通しが立っていないことが原因であるケースが多いです。1週間の時間配分を可視化すると、「この時間内に収めるには何を優先すべきか」という判断がしやすくなり、結果として残業削減につながります。
タイムブロッキングを始める5つの手順
タイムブロッキングを成功させるには、①タスクの棚卸し、②エネルギーレベルの把握、③時間ブロックの配置、④バッファ時間の確保、⑤週末の振り返り、の5つの手順を踏むことがポイントです。
タスクの棚卸しと優先順位付け
抱えているタスクをすべて書き出す。これがタイムブロッキング実践の第一歩です。頭の中にある「やるべきこと」を外部化することで、全体像が見えるようになります。
書き出したタスクは、アイゼンハワーマトリクス(緊急度×重要度の4象限)で分類すると整理しやすくなります。「重要かつ緊急」なタスクは最優先、「重要だが緊急でない」タスクは計画的に時間を確保、「緊急だが重要でない」タスクは効率化や委譲を検討、「重要でも緊急でもない」タスクは削減を検討します。
大切なのは、「重要だが緊急でない」タスクに意識的に時間を割くことです。スキルアップ、戦略立案、関係構築といった長期的な価値を生む活動は、緊急の仕事に追われると後回しになりがちです。
時間帯ごとのエネルギーレベルを把握する
午前中は調子がいいのに、午後になると眠くなる。こうした自分のリズムを把握することが、タイムブロッキングの精度を左右します。多くの人は午前中にエネルギーが高く、昼食後に低下し、夕方に少し回復するというパターンを持っていますが、個人差があるため、自分のゴールデンタイムを見つけることが大切です。
1週間ほど「何時ごろに調子が良かったか」を記録してみてください。自分のゴールデンタイムが見えてきます。このゴールデンタイムには、集中力を要する重要なタスクを配置します。逆に、エネルギーが低い時間帯には、メールチェックや事務作業など、負荷の軽いタスクを割り当てます。
正直なところ、この「エネルギー管理」の視点を持つかどうかで、タイムブロッキングの成果は大きく変わります。
カレンダーに時間ブロックを配置する
優先順位とエネルギーレベルを把握したら、いよいよ実際にカレンダーへ配置していきます。Googleカレンダーなどのツールを使うと、色分けや繰り返し設定ができて便利です。
配置の順序としては、まず「動かせない予定」(会議、アポイントメントなど)を入れ、次に「重要な集中作業」の時間を確保し、最後に「その他のタスク」を埋めていきます。重要な作業を先に確保することで、隙間時間に押し込められる事態を防げます。
時間ブロックの長さは、タスクの性質に応じて調整します。集中作業は90分〜2時間、定型業務は30分〜1時間、メール対応は30分程度が目安です。
バッファ時間を確保する
1日をびっしり埋めてしまうこと。これがタイムブロッキングで最も多い失敗パターンです。予定通りに進まなかったとき、すべての計画が崩れてしまいます。
このリスクを回避するために、バッファ時間を設けることが前提となります。具体的には、1日の時間の70〜80%をタスクに割り当て、残りの20〜30%をバッファとして確保します。タスク間に15〜30分の余裕時間を挟むイメージです。
バッファ時間は「何もしない時間」ではありません。予定外の対応、作業の遅れのリカバリー、頭の切り替えなどに使う「調整弁」として機能します。
週末に振り返りと翌週の計画を立てる
一度設定したら終わりではない。タイムブロッキングの精度を高めるには、週末や月曜朝に振り返りの時間を設け、計画と実績のズレを確認し、翌週の計画に反映させることが大切です。
振り返りでは、「計画通りに進んだタスク」「時間が足りなかったタスク」「予期せぬ割り込み」の3点を記録します。時間が足りなかったタスクは見積もりを修正し、割り込みが多い時間帯には集中作業を入れないなど、次週の計画を調整します。
この振り返りと改善のサイクルを回すことで、3〜4週間後には自分に合った時間配分が見えてきます。
タイムブロッキングの活用例と失敗パターン
タイムブロッキングは、職種や業務内容に応じて使い方をカスタマイズできます。ここでは、具体的な活用例と、よくある失敗パターンの両面から解説します。
企画・マーケティング職での活用例
※本事例はタイムブロッキングの活用イメージを示すための想定シナリオです。
食品メーカーで新商品企画を担当する田中さん(32歳)は、日中の会議やメール対応に追われ、企画書を作成する時間が取れないという課題を抱えていました。そこで、毎日午前9時〜11時を「企画集中タイム」としてカレンダーにブロック。この時間はメールを閉じ、チャットの通知もオフにするルールを設定しました。
2週間続けたところ、以前は3日かかっていた企画書が1日で完成するようになりました。田中さんは「午前中に集中作業を終わらせておくと、午後の会議にも余裕を持って臨める」と振り返ります。GA4でのデータ分析を午前中の集中タイムに組み込むことで、根拠のある提案ができるようになり、上司からの評価も向上しました。
経理・バックオフィス職での活用例
※本事例はタイムブロッキングの活用イメージを示すための想定シナリオです。
中堅メーカーの経理部門で働く山本さん(28歳)は、月末の請求書処理と日常的な問い合わせ対応の両立に悩んでいました。特に月末は残業が常態化し、簿記2級の資格を活かした分析業務に時間を割けない状況が続いていました。
山本さんはタイムブロッキングを導入し、午前10時〜12時を「集中処理タイム」、午後2時〜3時を「問い合わせ対応タイム」として固定しました。急ぎでない問い合わせには「午後2時以降に回答します」と伝えることで、午前中の作業中断を防げるようになりました。結果として、月末でも定時退社できる日が増え、空いた時間で管理会計の学習にも取り組めるようになっています。
失敗パターン①:詰め込みすぎて余裕がない
「8時間あるから8時間分のタスクを入れよう」と考えると、必ず破綻します。作業には予想以上に時間がかかることがあり、急な依頼も入ります。余裕のない計画は、一度崩れると連鎖的にすべての予定がズレてしまいます。
対処法は、前述の通りバッファ時間を確保することです。特に導入初期は、タスクに割り当てる時間を控えめにし、余白を多めに取ることをお勧めします。
失敗パターン②:予定外の割り込みで崩壊する
「集中時間を確保したのに、上司から急な依頼が来て対応せざるを得なかった」という経験を持つ方は多いでしょう。ここが落とし穴で、すべての割り込みを排除しようとするのは現実的ではありません。
大切なのは「本当に緊急か」を見極める判断基準を持つことです。「今日中に対応すれば問題ない依頼」と「今すぐ対応が必要な依頼」を区別し、前者はバッファ時間や翌日の予定に組み込みます。カレンダーに「集中中」と表示しておく、チャットのステータスを「取り込み中」に設定するなど、周囲に状況を伝える工夫も役立ちます。
失敗パターン③:完璧を求めすぎて続かない
「計画通りにできなかった」と落ち込み、タイムブロッキングをやめてしまう人もいます。しかし、計画が100%実行できることはまれです。
タイムブロッキングの本質は、完璧な計画を立てることではなく、時間の使い方を意識的にコントロールすることにあります。達成率60%でも十分です。何も計画せずに過ごした1日より、60%でも計画を実行した1日の方が、はるかに多くの成果を生み出せます。
タイムブロッキングを継続するコツ
タイムブロッキングを習慣化するには、①小さく始める、②ツールを活用する、③定期的に見直す、の3点を意識することがポイントです。
小さく始めて習慣化する
1日全体をブロック化しようとせず、まず「午前中の2時間だけ」など、限定的な範囲で始めてみてください。「毎日午前9時〜11時は集中作業の時間」というシンプルなルールから始めて、2週間続けることを目標にします。
注目すべきは、「習慣化に必要なのは意志力ではなく、ハードルを下げること」という点です。最初から完璧を目指すと挫折しやすくなります。できることから始め、少しずつ広げていく戦略が、長期的な継続につながります。
ツールを活用して手間を減らす
Googleカレンダー、Microsoft Outlook、Appleカレンダーなど、普段使っているカレンダーアプリで十分対応できます。
Googleカレンダーでの実践方法としては、まず「集中作業」「会議」「メール対応」など、活動の種類ごとに異なる色を設定します。次に、繰り返し設定を活用して、定期的なタスク(週次ミーティング、日次のメールチェックなど)を自動で入力します。最後に、「予約枠」機能を使って、他の人から予定を入れられない集中時間を確保します。
タスク管理にはTodoistやNotionを併用し、カレンダーと連携させると便利です。
定期的な見直しで最適化する
週に一度、30分程度の振り返り時間を設け、計画の精度を高めていくことが継続の鍵です。振り返りでは、「計画と実績のズレ」「時間見積もりの精度」「割り込みの頻度と傾向」を確認します。
大切なのは、振り返り自体もカレンダーにブロックとして入れておくことです。「金曜16時〜16時30分:週次振り返り」のように予定化しておかないと、忙しさにかまけて省略してしまいがちです。
よくある質問(FAQ)
タイムブロッキングとタイムボクシングの違いは?
タイムブロッキングは時間帯からタスクを設計する手法です。
タイムブロッキングは「1日や1週間をどう使うか」という俯瞰的な視点で、各時間帯に活動を割り当てます。一方、タイムボクシングは「このタスクを何時間で終わらせるか」という個別タスク起点のアプローチです。
実務では両者を組み合わせると成果が出やすくなります。
タイムブロッキングは1日何時間が適切?
1日のうち70〜80%程度をブロック化するのが適切です。
8時間勤務なら5.5〜6.5時間程度をタスクに割り当て、残りをバッファとして確保します。集中作業のブロックは、1日3〜4時間が上限と考えておくと無理がありません。
導入初期は控えめに設定し、慣れてきたら調整していくのがお勧めです。
タイムブロッキングが続かない場合の対処法は?
計画の粒度を下げ、1つの時間ブロックだけを守ることから始めましょう。
「毎日午前中の2時間だけは集中作業」というシンプルなルールを2週間続けることで、成功体験が得られます。全体を完璧にしようとせず、少しずつ範囲を広げていく戦略が継続の秘訣です。
Googleカレンダーでの実践方法は?
まず活動の種類ごとに色を設定し、視覚的に区別します。
次に、繰り返し設定で定期的なタスクを自動入力し、「予約枠」機能で他の人から予定を入れられない集中時間を確保します。週末に翌週のブロックを一括で配置し、毎朝微調整するサイクルが効率的です。
タイムブロッキングが向いている人の特徴は?
複数プロジェクトを並行して進めている人に特に向いています。
週単位で計画を立てるのが好きな人、時間配分を俯瞰したい人、予定が多くスケジュール管理が複雑な人にも適しています。業務の大半が突発対応の場合は、柔軟性を重視したアレンジが必要です。
リモートワークでの活用ポイントは?
オフィスより割り込みが少ない環境を活かし、集中ブロックを長めに設定できます。
カレンダーを同僚と共有し「この時間は集中中」と伝えることで、オンラインでの割り込みを防ぐ工夫が必要です。終業時間もブロックとして明示しておくとメリハリがつきます。
まとめ
タイムブロッキングで成果を出すポイントは、田中さんや山本さんの事例が示すように、まず重要な集中作業の時間を先に確保し、バッファを設けて柔軟性を持たせ、週次で振り返りながら改善を続けることにあります。
最初の1週間は、午前中の2時間だけを「集中ブロック」として設定することから始めてみてください。この小さな成功体験を積み重ねることで、1か月後には時間の使い方が大きく変わっているはずです。
今日からカレンダーを開き、明日の午前中に「集中作業」のブロックを1つ入れることで、タイムブロッキングの第一歩を踏み出しましょう。

