ー この記事の要旨 ー
- DMAICはDefine・Measure・Analyze・Improve・Controlの5段階で業務プロセスを統計的に改善する手法で、シックスシグマの中核フレームワークとしてモトローラ発祥以来多くの業界で活用されています。
- 本記事では各フェーズの進め方と実務でのつまずきに加え、Control定着率を決める「責任者明確化度・モニタリング頻度・横展開設計」の3軸による独自の運用設計フレームを解説しました。
- さらにプロセス安定度とデータ取得可能性の2軸判断フローで、DMAICを使うべき場面と代替手法の使い分けまで踏み込み、読者が自組織の課題に応じて判断できる枠組みを提供する内容です。
DMAICとは?データで業務改善を進める5段階の手法
DMAICは、シックスシグマを代表する品質改善プロセスで、Define(定義)、Measure(測定)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)の頭文字から名付けられた5段階の業務改善フレームワークです。
1986年にモトローラのエンジニアであるビル・スミスが提唱したシックスシグマを土台に、1995年以降のGE(ゼネラル・エレクトリック)による全社展開で広く知られるようになった経緯を持ちます。現在では金融、IT、医療、サービス業など幅広い業界で活用されており、感覚や経験ではなく「データに基づいて課題を構造的に解決する」点に最大の特徴があります。
DMAICは5段階の順序で業務プロセスを統計的に改善する手法で、成果の持続を左右するのは第5段階のControl定着度を決める3つの判断軸です。本記事では、各フェーズの進め方と、実務でつまずきやすい論点、そして独自の運用設計フレームまでを解説します。
DMAICの基本|5段階プロセスの全体像
DMAICは、課題を定義してから管理に至るまでの5ステップを順番に踏むことで、業務プロセスの問題を統計的に解決する手法です。
各フェーズには明確な目的とアウトプットが設定されており、前の段階の成果物が次の段階の前提条件となる構造になっています。このため、途中のフェーズを省略したり順序を入れ替えたりすると、改善活動そのものの精度が著しく低下します。
Define(定義)|プロジェクトのゴールと対象を決める
最初のDefineフェーズでは、「何を、なぜ、いつまでに改善するのか」を言語化します。ここで作成するプロジェクトチャーターは、スポンサーとチームが共通認識を持つための合意文書として機能し、後続の全フェーズの判断基準になります。
Defineで押さえるべき要素は、顧客要求(CTQ:Critical to Quality)、改善対象のプロセス範囲、達成したいゴール、プロジェクトチームの体制、そしてスコープの境界線です。SIPOC(Supplier/Input/Process/Output/Customerの頭文字で、業務プロセスを5要素で俯瞰する図法)を使って業務プロセスを俯瞰的に整理する方法が一般的で、このときに目標設定の枠組みとしてSMARTを併用すると、数値化しやすい目標に落とし込めます。
Measure(測定)|現状をデータで可視化する
Measureフェーズでは、現状のプロセスがどのような状態にあるかを数値で把握します。感覚的な「悪そう」「遅そう」ではなく、実測値で現状を示すことがこのフェーズの役割です。
測定では、何を(測定項目)、どの方法で(測定手順)、どの頻度で(サンプリング間隔)データを取るかを事前に設計します。工程能力指数(Cpk:工程のばらつきが規格内にどれだけ収まるかを示す指標)、欠陥率(DPMO:100万機会あたりの不良数で表す品質指標)、シグマ水準といった品質管理指標が代表的な測定項目で、ばらつきの大きさを標準偏差で把握することも重要です。KPIツリーで上位目標から測定指標への分解構造を設計しておくと、データが取れたあとの分析フェーズがスムーズに進みます。
Analyze(分析)|ばらつきの真因を特定する
Analyzeフェーズは、測定で得られたデータから、問題を引き起こしている真の原因を特定する段階です。表面的な症状ではなく、プロセスのどの変動要因(X因子)が結果(Y)にどれだけ影響しているかを統計的に明らかにします。
分析に使われる代表的な手法は、特性要因図(魚骨図)、5Why分析、パレート図、ヒストグラム、散布図、回帰分析などです。仮説を立てて検証するプロセスを繰り返すため、仮説思考の土台があると分析の精度が上がります。ここで特定した真因が、次のImproveフェーズの打ち手の対象になります。
Improve(改善)|真因への打ち手を設計・実装する
Improveフェーズでは、Analyzeで特定した真因に対して具体的な改善策を立案し、パイロット導入で効果を検証した上で本格展開します。単なるアイデア出しではなく、実験計画法(DOE:Design of Experimentsの略で、複数の変数を効率的に検証する統計手法)などを用いて「どの変数をどう変えれば結果がどう変わるか」を事前に設計する点が、他の改善手法との違いです。
改善案が複数ある場合は、効果と実装コスト、副作用のリスクで評価してから優先順位を決めます。現場オペレーションへの影響が大きい打ち手は、本格展開前に小規模な試行で副作用を確認することが鉄則です。
Control(管理)|改善効果を定着させる仕組みをつくる
Controlフェーズは、改善された状態を維持し、元に戻らないようにする仕組みを整える段階です。管理図で継続的にプロセスの状態をモニタリングし、標準作業手順書(SOP)を更新し、関係者への教育とOJTを実施します。
DMAICが他の改善手法と大きく異なるのは、このControlフェーズを独立したステップとして明確に位置付けている点です。改善は実装した瞬間から風化が始まるため、「歯止め」と「横展開」の設計が定着度合いを決定します。
DMAICと他の改善フレームワークとの違い
DMAICを理解する上で、隣接するフレームワークとの違いを押さえておくと、使いどころの判断がしやすくなります。対象範囲、手法の軸、想定される改善深度がそれぞれ異なるため、課題に応じて使い分けることが実務では重要です。
PDCAとの違い|汎用サイクル vs 統計的改善プロセス
PDCAは計画・実行・評価・改善の4ステップで構成される汎用的な改善サイクルで、あらゆる業務に適用できる柔軟性が強みです。一方DMAICは、統計的手法とデータ分析を前提とした5段階の品質改善プロセスで、適用対象は「ばらつきを減らして品質を安定させたい業務」に特化しています。
PDCAが繰り返しを前提にした循環型である一方、DMAICはプロジェクト単位で完結する線形型という構造的な違いもあります。関連記事『PDCAとは?』で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
BPRとの違い|抜本的再設計 vs 段階的統計改善
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、既存プロセスをゼロから設計し直す抜本的な変革手法です。対してDMAICは、既存プロセスの枠組みを保ったまま、統計的にばらつきを減らしていく段階的な改善手法といえます。
業務プロセスそのものの存在意義を問い直す必要があるならBPR、プロセスは妥当だが品質や効率にばらつきがあるならDMAIC、という使い分けが基本です。関連記事『BPRとは?』で詳しく解説していますのでご参照ください。
ECRSとの違い|定性的4原則 vs 定量的5段階
ECRSは排除・結合・再配置・簡素化の4原則で業務を見直す定性的なフレームワークで、小集団活動や現場主導の改善提案に向いています。DMAICは定量的なデータ分析を軸にするため、統計リテラシーを持ったメンバーの参画が前提になります。
現場で思いついた改善アイデアを素早く試すならECRS、データで根本原因を突き止めて再発を防ぐならDMAIC、という選び方になります。関連記事『ECRSとは?』で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
DMAICを導入するメリットと向く課題タイプ
DMAICを導入する企業がこの手法を選ぶ理由は、主に3つの価値にあります。ただし、すべての課題に万能なわけではなく、向く課題タイプとそうでないタイプの見極めが、投資対効果を大きく左右します。
メリット1|属人化した改善活動を標準化できる
DMAICは5段階のフェーズとアウトプットが決まっているため、誰がプロジェクトを担当しても一定の型で改善が進みます。属人的な「改善が得意な人」に依存せず、組織としての改善能力を再現可能な形で蓄積できる点が大きな価値です。
ブラックベルトやグリーンベルトといった認定資格制度があることも、改善活動を職能として組織に根付かせる仕組みとして機能しています。
メリット2|データ前提で議論できるため意思決定が速くなる
Measureフェーズで現状が数値化され、Analyzeフェーズで真因がデータで示されるため、経営層への説明や部門間調整の議論が「数字ベース」で進みます。感覚論や政治的駆け引きに時間を奪われにくくなり、打ち手の合意形成が加速します。
メリット3|Controlフェーズで成果が定着しやすい
改善しても時間経過とともに元に戻ってしまう「リバウンド現象」は、多くの改善活動で見られる問題です。DMAICはControlフェーズを独立ステップとして設計しているため、標準化・モニタリング・横展開の3点を体系的に仕込める構造になっています。
DMAICが向く課題・向かない課題
DMAICが真価を発揮するのは、繰り返し発生する業務プロセスで、かつ結果にばらつきがあり、測定可能なデータが取得できる課題です。製造ラインの不良率改善、コールセンターの応答時間短縮、請求書処理のエラー削減などが典型例になります。
一方で、一度きりのプロジェクト、まだ業務プロセスが固まっていない新規事業、測定データが取得困難な創造的業務には向きません。このような場合は、PDCAやアジャイル的な反復アプローチの方が適しています。
DMAIC運用でつまずくポイントと回避策
DMAICは体系化された手法であるがゆえに、「教科書通りに回そうとしてうまくいかない」という摩擦が現場で頻発します。ここでは、実務で起きる典型的な落とし穴と、その回避策を5段階別に整理します。
Define工程の落とし穴|プロジェクトテーマ選定ミス
最初のDefineで多いのは、スコープが広すぎるか、逆に狭すぎるケースです。スコープが広すぎるとプロジェクトが長期化して経営層の関心が途切れ、狭すぎると改善効果が小さく費用対効果が見合わなくなります。
回避策は、「3〜6ヶ月で完了し、金額換算で効果が見える単位」にテーマを絞り込むことです。プロジェクトチャーターを作成する段階でスポンサーと合意し、途中でのスコープクリープを防ぐ線引きを明文化しておきます。
Measureで詰まるポイント|データが取れない現場
「そもそも現状のデータが記録されていない」「測定システム自体の精度に問題がある(MSA精度不足:Measurement System Analysisの略で、測定の信頼性評価そのものが低い状態)」という理由で、Measureフェーズで停滞するプロジェクトは珍しくありません。非製造業やホワイトカラー業務では特にこの壁に直面しやすい領域です。
回避策は、既存データの活用にこだわらず、数週間のデータ収集期間を事前に組み込んでおくことです。測定項目を絞り込み、手作業での記録でもよいので、分析に耐える最低限のサンプル数を確保する方針に切り替えます。
Analyze段階の仮説バイアス
分析フェーズでは、担当者が最初に立てた仮説に無意識に引っ張られ、その仮説を支持するデータだけを集めてしまう現象が起きがちです。真因の特定というDMAICの核心が揺らぐため、プロジェクト全体の価値を損ないます。
回避策として、複数の仮説を同時並行で検証する姿勢を徹底し、「仮説を棄却するためのデータ」を意図的に探すプロセスを入れ込みます。ロジックツリーで原因候補を網羅的に分解しておくと、仮説の偏りを減らせます。関連記事『ロジックツリーとは?』もあわせてお読みください。
Improveで起きる現場抵抗
改善策を設計できても、現場が「今までのやり方を変えたくない」と抵抗するケースは非常に多く見られます。とくにベテラン社員の暗黙知に依存した業務では、標準化そのものが抵抗の対象になります。
回避策は、現場を「改善される側」ではなく「改善するチームの一員」として巻き込むことです。Analyzeフェーズの段階から現場ヒアリングを組み込み、真因の特定プロセスに参加してもらうことで、Improveの打ち手が「押し付け」ではなく「合意」に変わります。
Control形骸化|2年目以降の失速要因
もっとも軽視されがちで、もっとも失敗が多いのがControlフェーズの形骸化です。プロジェクト終了とともに管理図の更新が止まり、SOPが現場で参照されなくなり、1年後には元の状態に戻っているという失敗パターンは多くの組織で観察されます。
回避策は、Controlフェーズの「管理責任者」と「定期レビューの日程」をプロジェクト終了前に明文化しておくことです。四半期ごとの効果測定レビューをマネジメントサイクルに組み込み、改善効果が劣化していないかを継続的にチェックする運用体制を設計します。関連記事『マネジメントサイクルとは?』で詳しく解説しています。
Control定着率を決める3つの判断軸|DMAIC成功率を上げる運用設計
DMAICを単発のプロジェクトで終わらせず、組織の改善文化として根付かせるには、Control定着率を左右する独自の判断軸を持って運用設計する必要があります。現場で多くのDMAIC失敗事例を観察すると、定着したプロジェクトと形骸化したプロジェクトの差は、以下3軸のスコアで説明可能です。
判断軸1|責任者明確化度|名指しと権限委譲のレベル
Control担当を「品質保証部で管理する」とだけ決めた組織が、3ヶ月後に誰も管理していない状態に陥る、このパターンが責任者明確化度の低い典型例です。
部署レベルの責任設定では、実務上の「当事者」が不明瞭になり、管理図のレビュー・現場への是正依頼・異常検知時の判断といったアクションが止まります。チャーター段階で「〇〇氏が週次で管理図をレビューし、逸脱時には現場に是正指示を出す権限を持つ」まで書き切れているかが分岐点になります。判断基準としては、個人名+権限範囲+判断基準の3点が明文化されていれば高スコア、どれか1つでも欠ければ中スコア、部署名のみなら低スコアと評価します。
判断軸2|モニタリング頻度|週次・月次・四半期の階層設計
第二の軸は、プロセスの状態を監視する頻度が、指標の性質に応じて階層化されているかです。
すべての指標を月次で確認すると、日々のばらつきを捉えきれず、異常の検出が遅れます。一方ですべてを週次にすると管理コストが膨張し、運用が続きません。現場レベルの直接指標(例:日次の不良件数・時間別の応答時間)は週次、部門レベルの集計指標(例:月間不良率・平均処理時間)は月次、経営報告レベルのアウトカム指標(例:顧客満足度スコア・プロジェクト全体のコスト削減額)は四半期、という3層の頻度設計ができていれば高スコアです。単一頻度のみの設計は低スコアになります。
判断軸3|横展開設計|他部門へのロールアウト計画の有無
第三の軸は、改善成果を発見した部門だけで完結させず、類似プロセスを持つ他部門への展開計画がチャーター段階で組み込まれているかです。
DMAICは一度真因を特定すると、同じメカニズムで起きている問題が他部門にも存在するケースが頻繁にあります。横展開の計画がない場合、改善効果は1部門に閉じ、組織全体の投資対効果が大きく下がります。横展開対象部門の特定+展開判断時期+担当者の3要素が揃っていれば高スコアです。
3軸スコアの読み方と改善アプローチ
3軸がすべて高スコアなら、Control定着率は高い水準で維持されます。1軸でも低スコアがある場合、その軸から補強することが優先順位最上位の判断になります。特に判断軸1(責任者明確化度)が低い場合、他2軸を整えてもプロジェクトは形骸化するため、最初に手を入れるべき領域です。
DMAIC導入のビジネスケース(想定シナリオ)
ある製造業の中堅企業で、工場の出荷前検査における不良品見逃し率が課題になっていました。従来は「ベテラン検査員の目視精度に依存」という属人的な状態で、退職や異動のたびに品質が揺らいでいたのです。
DMAICを適用し、Defineで「不良見逃し率を半年で半減させる」を目標化、Measureで過去12ヶ月の検査データを再集計、Analyzeでパレート図と5Why分析を実施したところ、特定の検査項目で照明条件によるばらつきが大きいことが判明しました。Improveで検査台の照明を標準化し、Controlで管理図による日次モニタリングと月次レビューを制度化した結果、見逃し率が改善された状態が維持されています。
このケースで効いたのは、判断軸1として特定の品質管理担当者を管理責任者に指名したこと、判断軸2で週次(現場チェック)と月次(部門レビュー)の2層モニタリングを設計したこと、そして判断軸3で類似ラインへの横展開を6ヶ月後に予定として組み込んだことです。改善そのものより、3軸の運用設計が定着を支えました。
補足|SMARTとKPIツリーの併用で判断軸の精度が上がる
3軸の運用設計は、Defineフェーズの目標設定とMeasureフェーズの指標設計が精密であるほど機能します。目標の数値化にはSMARTを、指標の構造化にはKPIツリーを併用することで、Controlフェーズで「何を監視すべきか」が明確になります。関連記事『SMART目標とは?』および『KPIツリーの作り方とは?目標を数値に落とし込む5ステップ』で詳しく解説しています。
DMAICを使うべきか判断する2軸フロー|代替手法との使い分け
DMAICは強力な手法ですが、使うべきでない状況を見極めることも同じくらい重要です。ここでは、「プロセスの安定度」と「データ取得可能性」の2軸で、DMAICと代替手法の使い分けを判断するフレームを提示します。
2軸判断フローの全体像
縦軸に「プロセスの安定度」(既存プロセスが固まっているか・新規領域か)、横軸に「データ取得可能性」(測定可能な数値データが取れるか・定性的情報のみか)を置くと、4象限のマトリクスが描けます。DMAICが適しているのは、プロセスが安定しておりかつデータ取得可能な象限に限定されます。
象限1|プロセス安定×データ取得可能|DMAIC適用領域
既存業務プロセスが固まっており、測定データが継続的に取得できる領域です。製造ラインの不良率改善、コールセンターの応答時間短縮、請求書処理のエラー削減、銀行の事務処理ミス削減などが該当します。DMAICの本来の適用対象であり、5段階プロセスの精度が最大化される象限です。
象限2|プロセス安定×データ取得困難|ECRS・QC7つ道具が優位
業務プロセスは固まっているものの、定量的なデータが取りにくい領域です。事務系のホワイトカラー業務や、顧客対応の質的改善などが該当します。統計的手法の前提が成立しないため、DMAICは重装備すぎます。ECRSの4原則で定性的に業務を見直すか、QC7つ道具で定性情報を半定量化するアプローチが現実的です。
象限3|プロセス未確立×データ取得可能|アジャイル・リーンスタートアップが優位
新規事業やサービス立ち上げ期で、プロセスそのものがまだ固まっていないが、ユーザー行動データなどは取得できる領域です。この場合、DMAICの「現状プロセスのばらつきを減らす」という発想自体が課題と合いません。スクラムやリーンスタートアップで仮説検証を反復する方が適しています。
象限4|プロセス未確立×データ取得困難|デザイン思考・プロトタイピングが優位
創造的企画、R&D初期、新規コンセプトの探索など、プロセスもデータも未確立な領域です。DMAICは完全に不適で、デザイン思考やプロトタイピング思考で発散と収束を繰り返すアプローチが求められます。
自己流運用を避けるための前提チェック
2軸フローで「DMAIC適用領域(象限1)」と判定された場合でも、統計リテラシーを持つメンバーの確保、Controlフェーズの予算確保、管理責任者の個人指名という3点が整わない場合は、一時的にPDCAで回しながらDMAIC導入の準備を進める判断が妥当です。名前だけDMACで中身が伴わない「自己流運用」は、かえって組織の改善力を損なう選択になります。関連記事『問題解決能力が高い人の特徴とは?』もあわせてお読みください。
よくある質問(FAQ)
DMAICとDMADVの違いは何ですか?
DMAICは既存プロセスの改善、DMADVは新規プロセスの設計に用いる手法です。
DMADV(Design for Six Sigmaの代表的手法で、略称はDFSS)はDefine・Measure・Analyze・Design・Verifyの5段階で構成され、まだ存在しないプロセスや製品をシックスシグマの品質水準で設計するときに使われます。既存の業務プロセスを改善したいならDMAIC、ゼロから新しいプロセスを設計したいならDMADVという使い分けになります。
DMAICは製造業以外でも使えますか?
はい、金融、IT、医療、物流、サービス業など幅広い業界で活用されています。
業種別の具体的な適用イメージとしては、コールセンターで「応答時間のばらつき削減」を目的にDMAICを回すケースでは、Measureで応答時間データを曜日・時間帯別に収集し、Analyzeで長時間応答が発生する要因を特定、Improveでトークスクリプトとエスカレーション基準を標準化する流れが典型です。また、経理部門で「請求書処理エラー削減」を目的とするケースでは、エラー種別ごとのパレート分析から入力項目の仕様変更に落とし込むパターンが多く見られます。医療分野では「外来患者の待ち時間短縮」プロジェクトで、受付から診察までの各工程の所要時間データを取得し、ボトルネック工程に照準を合わせる適用例が報告されています。非製造業で使う場合は、測定可能なKPIを設計する段階に時間をかけることが不可欠な下地になります。
DMAICとリーンシックスシグマの関係は?
リーンシックスシグマは、DMAICを核とするシックスシグマに、トヨタ生産方式(TPS)由来のリーン生産方式を統合した手法です。
シックスシグマは1986年にモトローラで誕生し、1995年頃からGE(ゼネラル・エレクトリック)が全社展開したことで世界的に普及した経緯があります。シックスシグマが「ばらつきを減らす」ことに焦点を当てるのに対し、リーンは「ムダ・ムラ・ムリ(3M)を排除する」ことを重視します。両者を組み合わせることで、品質とスピードの両方を同時に改善できるとされ、現代の改善活動では単体のシックスシグマよりもリーンシックスシグマとして導入されるケースが増えています。
DMAICを1人で実践できますか?
小規模な改善であれば可能ですが、本格的なプロジェクトにはチーム体制を推奨します。
DMAICは仮説検証を伴う統計的分析を含むため、1人で完結させると仮説バイアスがかかりやすく、真因の特定精度が落ちます。また、Improveフェーズで現場への変更を依頼する場合、スポンサーやステークホルダーの巻き込みが前提となるため、チームで進める方が実務的です。個人で学習する段階では問題解決フレームワークとして手順を追うことは有意義で、本格運用時はチーム化を目指すとよいでしょう。
DMAICの認定資格(ベルト制度)は必要ですか?
必須ではありませんが、組織として本格導入するなら取得を推奨します。
ベルト制度はグリーンベルト、ブラックベルト、マスターブラックベルトの階層で構成され、統計的手法の習熟度とプロジェクト推進経験を認定する仕組みです。認定資格がなくてもDMAICを運用することは可能ですが、研修とトレーニングを通じて手法の精度が担保されるため、企業として継続的に改善活動を回すなら、主要メンバーの資格取得に投資する価値があります。
DMAICプロジェクトの標準的な期間はどのくらいですか?
一般的には3〜6ヶ月が目安で、スコープや業界によって変動します。
短すぎるとMeasureでのデータ収集期間が確保できず、長すぎると経営層の関心が途切れて推進力を失います。プロジェクトチャーター作成時に、各フェーズの目安期間(Define:2〜3週間、Measure:4〜6週間、Analyze:3〜4週間、Improve:4〜8週間、Control:4週間以上)を設計しておくことで、全体のペース配分がしやすくなります。
まとめ
DMAICは、Define・Measure・Analyze・Improve・Controlの5段階でプロセスを統計的に改善する手法です。1986年のモトローラ発祥からGEの全社展開を経て、現在は製造業を超え金融・IT・医療・物流・サービス業まで広がっています。データに基づいて真因を特定し、Controlフェーズまで体系化されている点が、PDCAやECRSなど他のフレームワークとの大きな違いです。
運用の定着度を決めるのは、責任者明確化度・モニタリング頻度・横展開設計という3つの判断軸です。この3軸のスコアが高いほどControl形骸化のリスクが下がり、2年目以降も改善効果が持続します。どれか1軸でも低スコアなら、そこから優先して補強することが投資対効果を最大化する判断になります。
DMAICを使うべきかは、プロセス安定度とデータ取得可能性の2軸で見極められます。適用領域を選び、3軸の運用設計を整えた上でプロジェクトを回すことで、DMAICは現在も強力な業務改善の選択肢であり続けます。
改善プロジェクトを前に進めるためのヒント
DMAICを学んでも、実務でプロジェクトが止まってしまう場面は少なくないはずです。次の一歩を後押しする記事をまとめました。
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Analyze段階で原因の当たりをつけるときに役立つ仮説の組み立て方。 - ロジックツリーとは?種類・作り方・活用のコツをわかりやすく解説
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改善プロジェクトをチームで動かす際の推進体制と手法の選び方を解説。

