共有メンタルモデルとは?具体例とチームでの見分け方

共有メンタルモデルとは?具体例とチームでの見分け方 組織開発

ー この記事の要旨 ー

  1. 共有メンタルモデルは、仕事の課題とチームについて、メンバーのあいだで共通に持たれている理解です。日常でいう「共通認識」と、まったく同じものでしょうか?
  2. 本記事では、理解がそろっているかを、同じ問いへの答えが似ているかと、その答えが正しいかに分けて見ます。打ち合わせや引き継ぎ、メンバーの交代で使える確かめ方です。
  3. 職場の例で見る4つの状態と、そろえる3つの手順、研究で分かる成果との関係もまとめました。まずは次の打ち合わせの終わりに、決まったことを一言ずつ書いてみませんか?

共有メンタルモデルは、チームで重なっている理解

共有メンタルモデルとは、仕事の要となる点について、チームのメンバーが共通に持っている、整理された理解のことです。この定義は、クリモスキーとモハメッドが1994年に示したものなどで、審判のチーム向けの尺度を作ったシンヴァルらの2020年の論文(英語の論文)が紹介しています。

名前にある「メンタルモデル」は、ここでは一人ひとりの頭の中にある理解を指します。その理解がメンバーのあいだで重なっている状態を、共有メンタルモデルと呼びます。そろうのは仕事の要となる点で、全員がすべての知識を同じように持つことではありません。

無意識の前提を問い直すという意味でのメンタルモデルは、関連記事『学習する組織とは?』で詳しく解説しています。

日常の「共通認識」は、複数の人が同じように理解していることを広く指します。共有メンタルモデルは、課題とチームに分けて、どれだけそろっているかと、正しいかを確かめる点で、範囲が絞られています。

チームの理解がそろっているかを判断するときは、メンバーの理解どうしが似ているか(似ている度合い)と、その理解が正しいか(正確さ)を分けて見ます。似ている度合いだけを確かめると、全員が同じ思い込みでそろっている状態を見落とします。

共有メンタルモデルの具体例:仕事の場面と研究の事例

共有メンタルモデルの具体例には、仕事の場面での例と、研究で調べられたチームの2つがあります。

仕事の場面で見る具体例

説明のための例として、提案書を作る小さなチームを考えます。何を、いつまでに出すかという課題についての理解と、誰が何を受け持ち、誰が最後に決めるかというチームについての理解を、メンバーが同じように説明できるとします。その説明が依頼の内容や合意した分担と合っていれば、課題とチームの両方で理解がそろっている状態にあたります。

研究で調べられたチーム

研究の対象には、大学のバスケットボール部、女子大学のラクロス部、シンガポール陸軍の戦闘チームなどがあります。

大学のバスケットボール部では、牛来らが2023年に、キャノン=バウワーズらの1993年の分類(次の節で説明する4種類)にもとづく尺度を作りました(バスケットボール版共有メンタルモデル尺度の開発)。

牛来らの研究では、部員453名の回答から4つの因子と16の項目が得られ、因子は4種類の分類と対応していました。尺度の確かさを見るために競技水準の高低で比べると、高いチームのほうが、どの因子の平均得点も高くなっていました。

九州地区の女子大学ラクロス部11チーム・207名を調べた池田の2012年の研究では、試合で優先すべき6つの事柄の順位づけがメンバーのあいだでそろっているほど、リーグ戦の成績が高い関係が見られました(チーム・メンタルモデルおよびチーム・パフォーマンスを規定する要因に関する検討)。この研究が測ったのは似ている度合いだけで、その順位が正しいかは扱っていません。

シンガポール陸軍の歩兵大隊で、兵士7〜8人ずつの戦闘チーム71を調べた、リムとクラインの2006年の研究もあります(Team mental models and team performance(英語の論文))。リムとクラインは、タスクワーク(課題をこなすこと)とチームワーク(メンバーどうしの連携)のそれぞれについて、メンバーのメンタルモデルが似ている度合いと、その正確さを測りました。

リムとクラインの研究では、タスクワークとチームワークのどちらでも、メンバーのメンタルモデルが似ている度合いがチームの成果を予測しました。理解の正確さも、成果を予測していました。

共有メンタルモデルでそろう中身

共有メンタルモデルでそろう中身は、仕事の課題についての理解と、チームについての理解の2つの領域に大きく分けられます。2つの領域は、マシューらが2000年の論文で、キャノン=バウワーズらの4種類をまとめたものです。同じ論文の、大学生56組を対象にした実験で、2つは区別して調べられました。

キャノン=バウワーズらの4種類

キャノン=バウワーズらが1993年の本の章で挙げた4種類は、装置のモデル、課題のモデル、チームの相互作用のモデル、チームのモデルです。日本語の名前は、英語の名前を本記事で訳したものです。

4種類 何についての理解か 領域
装置のモデル メンバーが扱う装置の働き、技術、道具 課題
課題のモデル 課題の手順、進め方の方針、不測の事態への備え、作業環境の制約 課題
チームの相互作用のモデル メンバーの役割と責任、役割どうしのつながり、やり取りの形、連絡の経路 チーム
チームのモデル 課題にかかわるメンバーの特性(知識、技能、能力、好み、傾向など) チーム

4種類の名前と中身、マシューらがそれを2つの領域にまとめたことは、シンヴァルらの論文が、先行研究の説明の中で書いています。

トランザクティブ・メモリー、心理的安全性との違い

共有メンタルモデルは理解そのものがそろっていることを指し、トランザクティブ・メモリー(交換記憶)は誰が何を知っているかの記憶、心理的安全性はチームで共有される信念を指します。

次の表は、3つの言葉を、出典の定義の言葉で並べたものです。違いを見るための並べ方で、それぞれの考え方の全体像ではありません。

言葉 出典の定義
共有メンタルモデル 仕事の要となる点について、チームのメンバーが共通に持っている、整理された理解
トランザクティブ・メモリー 誰が何を知っているかを覚えておく力。一人ひとりは、どの情報を誰が持っていそうかを覚えておく
心理的安全性 チームは対人関係のリスクを取っても安全だという、メンバーが共有する信念

出典:共有メンタルモデルはシンヴァルらの論文、トランザクティブ・メモリーは心理学者ダニエル・ウェグナーのページ(Transactive Memory(英語のページ))、心理的安全性はエドモンドソンが1999年に発表した論文です。

仕事に当てはめると、「この件は誰に聞けばよいか」がそろっているのはトランザクティブ・メモリーの側です。「この仕事をどう進めるか」がそろっているのは共有メンタルモデルの側にあたる、というのが本記事の整理です。

チームの理解がそろっているかは、似ている度合いと正確さでどう見分ける?

チームの理解がそろっているかは、同じ問いへのメンバーの答えが似ているか(似ている度合い)と、その答えが正しいか(正確さ)に分けて見分けます。2つを分けるのは、リムとクラインの研究で、似ている度合いと正確さが別々に測られ、どちらも成果を予測していたためです。

似ている度合いと正確さは別の物差しなので、似ている度合いが高くても、正確さが高いとは限りません。

リムとクラインの研究では、一人ひとりの答えと専門家3人の答えとの近さを求め、その平均をチームの正確さとしました。

本記事では、リムとクラインの考え方を仕事に移し、依頼書や合意した決定、手順書など、先に決めた基準とチームの答えがどれだけ合っているかを、正確さと呼びます。そうした基準の無い項目は、正しいかどうかを判断できません。

本記事では、似ている度合いと正確さの組み合わせで、理解の状態を次の4つに分けて見ます。4つの状態と、このあと挙げる場面ごとの確かめ方は、研究で使われた分類ではなく、本記事の整理です。

状態 似ている度合い 正確さ 見つけ方
似ていて正しい 高い 高い 決めた人や記録と照らして確かめる
似ているが誤っている 高い 低い 答えを比べても見つからない。決めた人や記録と照らして分かる
ばらばらで一部が正しい 低い 中くらい(正しい人と誤っている人がいる) 答えを並べると分かれが見え、決めた人や記録と照らすと、どの答えが正しいかも確かめられる
ばらばらで誤っている 低い 低い 答えを並べると分かれが見え、決めた人や記録と照らすと誤りも分かる

この表で比べるのは、決まったこと、次にすること、誰が何を決めるかのように、全員が同じ答えを持つべき項目です。こうした項目で答えがばらばらなら、少なくとも一部の人の理解は基準と合っていません。担当によって知っていることが違う項目や、答えが複数あってよい項目は、ここでは対象に入れません。

説明のための例です。提案書を作る小さなチームで、提出の期限を各自が書き出すとします。

全員が依頼書どおりの期限を書けば、似ていて正しい状態です。全員が同じ、依頼書と違う期限を書けば、似ているが誤っている状態です。

書いた期限が人によって分かれ、依頼書どおりの人とそうでない人がいれば、ばらばらで一部が正しい状態です。書いた期限が分かれ、依頼書どおりの人が一人もいなければ、ばらばらで誤っている状態です。

似ているが誤っている状態は、答えを基準と照らして見つけます。決まったことは、決めた人に見てもらうか、議事録や依頼書で確かめます。進め方にかかわることは、手順書や、その分野に詳しい人の答えと比べます。

議事録や依頼書などの記録で分かるのは何が決まったかまでで、決まったこと自体が正しいかは別に確かめます。

似ている度合いと正確さを確かめる場面には、打ち合わせの終わり、引き継ぎ、メンバーの交代があります。

打ち合わせの終わり:決まったこと、担当、次にすることを分けて書く

打ち合わせの終わりには、決まったこと、自分の担当、次にすることの3つを分けて、各自が一言ずつ書いて見せ合います。項目ごとに書くと、どこでずれたかが分かります。

決まったことと次にすることは、書いた内容が分かれていれば似ている度合いが低く、その場で直せます。自分の担当は、ほかのメンバーがその人の担当だと思っている内容と食い違っていないかを見ます。

書いた内容がそろっていても、決まったことと違えば正確さが低いので、決めた人が読むか、議事録や依頼書と照らして確かめます。

引き継ぎ:次にすることと、迷ったときの相談先を説明してもらう

引き継ぎでは、受け取った人に、次にすることと、判断に迷ったときに誰に聞くかを、自分の言葉で説明してもらいます。次にすることの説明は共有メンタルモデルの側の確かめで、誰に聞くかはトランザクティブ・メモリーの側の確かめです。

受け取った人の説明は渡した人が聞き、食い違う所は、手順書や記録と照らしてどちらが正確かを見てから直します。仕事の進め方と相談先を分けて聞くと、どちらの理解が欠けているかを分けて見られます。

メンバーの交代:新しく入った人の説明と比べる

メンバーが入れ替わったときは、新しく入った人に、誰が何を受け持ち、誰が何を決めるかを説明してもらい、前からいるメンバーの答えと比べます。

新しく入った人の答えだけがずれていても、その人だけを直すとは限りません。手順書や合意した内容と照らして、どちらの答えが正確かを確かめます。前からいるメンバーどうしでも答えが分かれていれば、チーム全体でそろえ直します。

チームを作ったばかりの時期に、どの段階にいるかから進め方を考えたい場合は、関連記事『タックマンモデルとは?』を参照してください。

チームの理解をそろえる3つの手順

チームの理解をそろえるには、そろえたい項目を課題とチームに分けて書き出し、各自の答えを先に出してもらってから、分かれた項目だけを話し合って決めます。研究で効果を確かめた手順ではなく、課題とチームの2つの領域に沿って組んだ本記事の手順です。

  1. 課題についての項目(目的、完成の形、期限など)と、チームについての項目(誰が何を受け持つか、誰が何を決めるかなど)に分けて、そろえたいことを書き出します。
  2. 話し合う前に、各自が自分の答えを書いて出します。答えを先に出すのは、メンバーの答えが似ているかをその場で見るためです。
  3. 答えが分かれた項目だけを、依頼書や合意した決定、手順書などの基準に照らして話し合い、決めたことを書いて残します。答えがそろった項目も、基準と食い違っていないかを確かめます。

手順2は、顔を合わせる機会が少ないチームでも、各自が先に答えを書いて共有する形で行えます。リーダーでなくても、依頼を受けた側から「私はこう理解しました」と書いて返せば、手順2を始められます。

何を決める話し合いなのかを一文にして、関係者で合意する具体的な手順は、関連記事『論点思考とは?』にまとめています。

共有メンタルモデルと成果の関係:チームのプロセスを介して

マシューらの論文では、課題とチームについての共有メンタルモデルが、どちらもその後のチームのプロセス(仕事の進め方)と成果に正の関係を持っていました。対象は大学生56組で、2人1組がパソコンの飛行戦闘シミュレーションに取り組む実験です。

56組の実験では、メンタルモデルが近づくことと成果との関係を、統計的には、チームのプロセスが完全に媒介していました。理解がそろっていることが直接ではなく、仕事の進め方を介して成果と関係していた、という結果です。

マシューらの実験で見られた関係を、共有メンタルモデルからチームのプロセス、成果へとつながる順に並べると、次のようになります。

共有メンタルモデル、チームのプロセス(仕事の進め方)、成果の3つが、上から順に縦に並んでいます。共有メンタルモデルからチームのプロセスへ、チームのプロセスから成果へ、下向きの矢印でつながっています。真ん中のチームのプロセスは緑の枠で示されています。共有メンタルモデルから成果へまっすぐつながる矢印はありません。

大学生の実験の結果を職場に当てはめるなら、理解をそろえたかどうかは、まず仕事の進め方に表れるかで見ることになります。これは論文の結論ではなく、本記事の当てはめです。

デチャーチとメスマー=マグナスが2010年に発表した、チーム認知の65件の研究をまとめて分析したメタ分析でも、チーム認知はチームの行動上のプロセスや動機づけの状態、成果と強い正の関係を持っていました。

チーム認知は、共有メンタルモデルのほかトランザクティブ・メモリーなども含む広い言葉で、共有メンタルモデルだけの結果ではありません。

暗黙の協調と対話の量

言葉を交わさなくても動きを合わせられることを、「暗黙の協調」や「阿吽の呼吸」と呼ぶ言い方も見られます。秋保らが2016年に発表した、大学祭の模擬店29チーム・236名への質問紙調査では、メンタルモデルが共有されているチームは、対話の量と目標売上の達成度に関連が見られず、高い成果を示しました(メンタルモデルを共有しているチームは対話せずとも成果を挙げる)。

模擬店29チームの調査によれば、メンタルモデルが共有されていないチームでは、対話が少ないほど達成度も低い関係が見られました。主観的な成果では、対話の量と成果の関係が共有メンタルモデルによって変わる様子は見られませんでした。著者らは、暗黙の協調には共有メンタルモデルが重要だと考察しています。

模擬店の調査の対象は、大学祭という短い期間に動く学生のチームです。調査の結論ではありませんが、職場で使うなら、話し合わなくても成果が出るとは受け取らず、理解がそろっているかを確かめるまでは話し合いを減らさない、という使い方になります。

共有メンタルモデルを仕事に使うときの注意点

共有メンタルモデルの研究結果を仕事に使うときは、研究の対象が職場のチームとは限らないことと、測り方で結果が変わることに気をつけます。

バスケットボール部や女子大学のラクロス部、大学祭の模擬店、大学生のシミュレーション実験、シンガポール陸軍の戦闘チームを対象にした研究は、どれも日本の会社の職場を調べたものではありません。研究の結果は、チームの理解をそろえる理由の1つとして使い、自分のチームでも同じ結果になるとは受け取りません。

共有メンタルモデルの測り方を比べた研究もあります。デチャーチとメスマー=マグナスは、同じ2010年に、共有メンタルモデルの測り方に絞った23件の研究のメタ分析も発表しています。

23件のメタ分析では、チームのプロセスを予測したのは、知識の組み立て方をとらえる測り方だけでした。成果は、知識の中身を見る測り方でも、組み立て方を見る測り方でも予測されていました。

測り方を比べたメタ分析では、共有メンタルモデルとチームのプロセスとの関係が、何をどう測るかで変わっていました。メンバーの答えを比べるときは、使った問いを残しておき、次に確かめるときも同じ問いを使います。

メンバーが案件ごとに入れ替わり、同じ顔ぶれで長く働かないチームにいる場合は、関連記事『チーミングとは?』もあわせて参照してください。

よくある質問

共有メンタルモデルとは何ですか?

仕事の要となる点について、チームのメンバーが共通に持っている、整理された理解のことです。そろっているかは、答えが似ているかと、その答えが正しいかに分けて確かめます。

メンタルモデル4つとは何ですか?

チームの研究では、キャノン=バウワーズらが1993年に挙げた、装置のモデル、課題のモデル、チームの相互作用のモデル、チームのモデルの4種類を指すことがあります。日本語の名前は、英語の名前を訳したものです。2000年の研究では、4種類を課題とチームの2つの領域にまとめています。

個人の自己理解を扱う本では、由佐美加子の「4つのメンタルモデル」といった言い方も見られ、チームの研究の4種類とは別の枠組みです。

メンタルモデルに具体例はありますか?

研究では、大学のバスケットボール部、女子大学のラクロス部、シンガポール陸軍の戦闘チーム、大学祭の模擬店などが調べられています。模擬店の調査では、メンタルモデルを共有しているチームで、対話の量と目標売上の達成度に関連が見られませんでした。短い期間に動く学生のチームの結果で、職場一般には広げられません。

「メンタルモデル」とはどういう意味ですか?

共有メンタルモデルの研究では、メンバー一人ひとりが頭の中に持つ、課題やチームについての理解を指します。組織論の文脈では、無意識の前提を指して「メンタルモデル」と呼ぶ言い方も見られます。

まとめ

共有メンタルモデルは、仕事の課題とチームについて、メンバーのあいだで共通に持たれている理解です。理解がそろっているかは、答えが似ているか(似ている度合い)と、答えが正しいか(正確さ)に分けて見分けます。似ている度合いだけでは、全員が同じ思い込みでそろっている状態を見落とします。

まず次の打ち合わせの終わりに、決まったこと、自分の担当、次にすることの3つを分けて、各自に一言ずつ書いてもらいます。決まったことと次にすることのうち、書いた内容が分かれた項目と、決まったことと違う項目を1つずつ拾い、その場でそろえ直します。

チームの関わり合いが成果につながる仕組みは、関連記事『チームダイナミクスとは?』で詳しく解説しています。

チームの理解がずれたときに読みたい実践記事

同じ話を聞いたはずなのに、任せた仕事の仕上がりがメンバーごとに食い違うことはありませんか。ズレが出た場面に合わせて、次の4本から読む記事を選んでください。

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